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2014年4月27日 (日)

同人誌「風恋洞 Friend」第42号(秦野市)

【「高円寺の家」小野友貴枝】
  同人雑誌作品としては長編の200枚に及ぶ小説です。作者渾身の力作であるな、と思いながら読みました。内容は、夫の家庭内暴力に苦しむ中年の妻を主人公にしています。昔の恋人との再会が絡みます。
 松井麗子からの夫松井恵弘の関係記述が三分の二に及んでいる。夫の視点からは、わずかですが描かれています。
  昔の恋人、家庭教師であったの笹森航太の視点からの記述が二割程度あります。妻の笹森佐和との事も少し描かれます。青春期に英語を習い肉体関係に及んだ笹森との再会から、ふたりの関係修復に至るお話が中心になっています。
 現在は、学校教師となっている麗子は、事に生きています。機会があり大学準教師の職を掴み取り意欲的に生きています。定年後、家庭に籠る夫の暴力傾向は強まり、子供たちも寄り付きません。別居から離婚を願望中です。
 通勤電車での笹森との再会がこの作品を加速させます。二人の身体が結びつくのは必然として書かれます。
  笹森のセカンドハウスに住み、夫と別居する麗子です。そこで病弱な笹森の妻・佐和が亡くなります。夫の暴力描写が繰り返し書かれます。麗子の心象風景も多く作者の意図が良く分かります。
  ハッピーエンドは中年女の本音のメルヘンとして読者も共感してしまいます。閉ざされた世界の作品です。
  医療の世界・そしてキャリァウーマンの世界。男女の性愛関係。作者は得意分野で存分に書きました。
 女流なので麗子に密着し、長くと書き込む部分は厚みとして理解しますが、もう少し刈り込んだ方が良いような気もします。どうでしょう。文章は判り易く読者が入り込めるように工夫されています。会話も地の文も書き慣れた安定感があります。
  家庭教師であった航太との青春時代の描写は力づくでこなしています。恩返しに身体を提供したということになっていますね。再会し肉体関係へと進む筋書きは作者の思い入れが強く出来過ぎた話として読まれる危険性ありですね。
  題名にある「家」については深い考察が書き込まれています。暴力描写はもっと凄惨でも良いかなとも思えるところがあります。それでも、力作です。二人だけの同人会誌に掲載するだけで消費されるのは残念ですね。
 発行所=〒257-0003秦野市南矢名1-5-13-4F、秦野文学同人会。
 紹介者=「詩人回廊」外刈雅巳。
 追記=本作品は、町田文芸交流会発足の最初の合同合評会対象作品です。町田文芸交流会で外部の読者の感想を得る事は大いに作者の励みになるでしょう。今後も多くの同人会グループの作品が読まれ議論され、伊藤昭一氏の視点で得るものがある事も期待します。

 

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