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2014年3月12日 (水)

【文芸月評】(読売新聞3月8日)。(文化部 待田晋哉記者)

【文芸月評】突き抜けた空気漂う 「いる社員、いらない社員」(プレジデント)、「人口減少の真実 甘く見るな!本当の怖さ」(週刊東洋経済)。/羽田圭介さん(28)の「メタモルフォシス」(新潮)/橋本治さん 「すばる」では、1月号から短期連載された橋本治さん(65)の「結婚」/アメリカ文学者の柴田元幸さん(59)編集の季刊誌「MONKEY」2号は、「猿の一ダース」と題して編集長お勧めの英語圏の7人、日本人4人の11作を並べた。
 『千夜一夜物語』を下敷きにして、お話で救われる人間がいることをさり気なく感じさせた村上春樹さん(65)の「シェエラザード」。田舎の中学の同窓会に出た落ち目の女優が、小さな転機となる夜を迎える川上未映子さん(37)の「彼女と彼女の記憶について」。小野正嗣さん(43)の「ウミガメの夜」は、旅に出た落ちこぼれ大学生3人組とウミガメの産卵をめぐる出来事が、海辺に浮かぶ幻の風景画のごとくきらめく。
 「早稲田文学」7号は、現在の不定期刊を次号から季刊とし、次回の新人賞を日本文学者のマイケル・エメリックさんが選考すると発表するなど話題が豊富だ。小説は、雪舟えまさん(39)の「とても寒い星で」に目が留まった。家の気持ちを聴く「家読み」と仲間たちが織りなす淋(さみ)しげな世界は、清潔な詩情が漂う。
 小池昌代さん(54)の「たまもの」(群像)は、40歳のころに昔の恋人から男の赤ん坊を預かり、育てることになった女性を描く長編。母親にとって息子は、小さな恋人のような存在だ。しかし女性と男児の関係は、血がつながってないだけ、より不安定に異性としての一面がちらつく。危うい興趣があった。(文化部 待田晋哉)

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