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2014年3月 8日 (土)

 石川智健 『エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守』

 アメリカでは、経済学によって犯罪を分析することが盛んに行われています。ノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカーや、世界で400万部以上のベ ストセラーとなった『ヤバい経済学』の著者である経済学者のスティーヴン ・レヴィット。殺人を経済学によって分析したゲアリー・E.マルシェ(ロ ジャーズ州立大学の准教授)などは、犯罪の分析や抑制方法を研究しており、 それらを活用して実際に不正を見抜いた事例もあります。今や、経済学の分 析手法を犯罪といった社会問題に当てはめるのは、一つの学問となっている と言っても過言ではありません。
 もし、日本の警察に、経済学の知識を持った人間がやってきて殺人捜査をし たらどうなるのか。 本邦初。 この言葉を使うにはいささか勇気がいりますが、今回書かせていただいた小説は、新しいアプローチのミステリー 皆様、〝バイアス″という言葉をご存じでしょうか。経済学でよく使われるもので、「偏見」や「偏り」という意味です。本作に登場する伏見真守は、行動経済学者として捜査の難航する特捜本部に派遣され、連続している殺人
 事件を担当します。経済事件でも、政治事件でもなく、殺人事件を捜査するのです。
 どうして経済学者が殺人事件を?  そう考える方もいらっしゃると思いますが、実は殺人事件の解決に経済学の 知識が有効だという論文がアメリカで発表されています。今回は、それをベ ースにして物語を構築しました。
 経済学者が殺人事件を解決できるはずがない。私も最初はそう思いました。
 しかし、これこそが経済学でいう〝バイアス″なのです。どうか、偏見にとらわれず、物語を楽しんでいただけたら幸いです。です。<石川智健> (講談社ミステリーの館2014年3月号より) 

 警察ミステリーの初物が今月15日頃に刊 行になります。『経済学捜査員 伏見真守』のサブタイトル通り、殺人捜査に 行動経済学者が加わって事件を解決する、というストーリーです。
 経済学といっても頭に「行動」が付くだけで、数学よりはどちらかというと心理学寄りに、犯行動機を犯人の「期待値」などに置き換えて分析していく ものです。しかも、主人公の伏見が、メインキャラクターの女性刑事に懇切
 丁寧に「行動経済学」のことを教えてくれます。読んでいるほうもミステリーを楽しみながら、いっしょに経済学が学べるわけです。 担当としては、「アンカリング効果」というのが気に入っています。これは、一つの基準を相手に植え付けてからある数字を提示すると、最初の基準が判断に影響を及ぼす、という現象のことです。バーゲンの値札の、値引き前の数字が高額だとつい買ってしまう、消費者心理のアレですね。<小説現代出版部 永露竜二>

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