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2014年3月18日 (火)

著者メッセージ: 朝井リョウさん 『スペードの3』

瑞々しい感性。同世代のありのままを切り取る鋭い観察力。
  インタビュアーの方から、このような言葉で紹介していただけることがよくあります。もちろん、いいことを言っていただいているわけなので、嬉しいしありがたいことなのですが、私は、なんともいえない気持ちになってしまうときがあります。なぜならば、私がある作品に対して「感想、伝えづらいな……」と思ったときによく使う言葉に、「瑞々しい感性」と「鋭い観察力」が含まれているからです。
 私は、二十歳で作家デビューをしました。二十二歳で大学を卒業し、その春にある企業へ就職しました。そろそろ、学生作家と呼ばれていた期間よりも、サラリーマンとしての期間のほうが長くなろうとしています。その中で沸き立つように「書きたい」と生まれ出てきた感情が、『スペードの3』のもととなりました。
 社会人として働いている上で沸き立った感情を書く。瑞々しい感性と言われるようなものに頼らない。その他にも、私がこの小説で果たしたいと思ったことはたくさんあります。
 「ミステリー小説に挑戦したい」という野望や、比喩の量を削りつつ魅力的な文章を書けるのかという挑戦など、これまで胸の中に秘めていたものに、ようやく手をつけ始めることができたような気がしています。この小説の感想が、朝井リョウが書くものへの本当の感想なのかもしれない。そんな予感が芽生えています。    (朝井リョウ)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2014年3月15日号 より)

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