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2014年3月31日 (月)

文芸交流会で話したこと

 文芸交流会に参加してほしいということを会員の外狩氏に頼まれて、出来る範囲で個人支援をするという自分の方針から、3月29日に町田駅近くの会場の出向いた。≪参照:作家・外狩雅巳のひろば
 外狩氏は交流会を拡大するために、その方向性を決めるのが主目的で、その合間に交流の事例として、何か話して欲しいということである。参加者のなかに作品紹介した「相模文芸」の吉野さくらさんが居た。そこで、時間があるというので、作品「あの日あの時」を、エッセイからもっと繊細で美的な文芸作品にするには、どうしたら良いか提案した。このエッセイには、自分史の一部としてのものとあるので、事実が基本である。そこで記憶を軸にした文学が存在すること。文学化するには、もっと詳しく、記憶の中の気分を細かく表現することでストーリーがなくても文芸作品になり得る構成になっていることを指摘。
 庭に吹く風、陽の移ろい。それらを思い出してみれば、必ず気分が付きまとっているはずなので、その気分だけに焦点をあてて文章化することを勧めた。作者は、茶道に詳しいのようなので聞いたら、先生もしているそうである。その心得をなぜ詳しく書かないのか、と質問したところ、以前に茶道の専門的な話を書いたら「わからない」と言われたので、簡単にしたという。そのような作風に興味のない人を相手にして書いているのでそうなるのであろう。しかし、元来は文芸が芸術であるためには、その道の専門家が間違いないと信じるような本物を提示しないと、成立しないと思う、という意味のことを述べた。あと、プロになった人は編集者その才能を認めている。そのような特別な人と同じに、何の対策も持たずに書いて読者を納得させようとするのは、自分には天才があるとういうことを前提にしているに等しい。しかし、自分には才能がないと自覚すると、ではどうするかと対策を考えるのではないか。その工夫の仕方が個性になるのだと思う。このような話は、私自身が、書き物をしており自問自答のようなことを話すにとどまる。

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2014年3月29日 (土)

第1回日経「星新一賞」に遠藤慎一さん「『恐怖の谷』から『恍惚(こうこつ)の峰』へ~その政策的応用」

第1回日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)の受賞者は一般部門グランプリには、藤崎慎吾のペンネームでノンフィクションやSF小説などを執筆する遠藤慎一さん(52)の「『恐怖の谷』から『恍惚(こうこつ)の峰』へ~その政策的応用」が選ばれた。賞金100万円。ジュニア部門グランプリは、立命館宇治中学3年、松田知歩(ちほ)さん(15)の「おばあちゃん」。同賞は、日本のSF小説を牽引(けんいん)した故・星新一にちなみ、理系的な想像力を問う文学賞として創設された。一般部門は1万字以内、中学生以下のジュニア部門は5000字以内の短編小説を募集する。(2014年3月28日 読売新聞)

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2014年3月28日 (金)

文芸時評3月(東京新聞3月27日)沼野充義氏

小林エリカ「マダム・キューリー」震災後文学の最前線拓く
坂口恭平「徘徊タクシー」突拍子もないポジテイブさ
≪対象作品≫小林エリカ「マダム・キューリーと朝食を」(すばる)/木村朗子「『震災文学論』のあとで」(新潮)/山内マリ子「悪魔じゃなかった?」(群像)/坂口恭平「徘徊タクシー」(新潮)/同「独立国家のつくりかた」(講談社現代文庫)。

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2014年3月27日 (木)

情報化社会と生活についてーー山川豊太郎氏のまとめ

 情報化社会に生活することは、どのようなことなのか、たまたま山川豊太郎氏が「高度情報化社会時代の『主体』」という題で執筆。「詩人回廊」に伊藤が「情報化社会の思想と主体」という題に変えて掲載させてもらいました。
 これは同人誌「砂」という同人しか読まないものに執筆したものですが、合評感想会では、難しくて、途中で読むのをやめてしまったという話も聞きます。私はなるほどそうか、と参考になりました。
 そこで、皆が納得するのではないかというような解説をしてみたいと思います。
 現在、パソコンを8.1に変えたため使い方がわからず、不便な思いでぼちぼち運営しています。新しい情報システムであっても、アナログ人間には、やりにくいものです。情報化社会の不都合です。
 しばらく更新が途切れるかも知れませんが、試行錯誤中でこつこつ学んでいます。
 きょうはメールでPFDが添付したのがあったのですが、開くソフトをダウンロードしませんと、開かないという。従来のカメラで、取り込みをしようしたら、対応していないというので、これも編集装置が使えない。プリンターも変えたが、どう使えば良いのか、これから思案のしどころ。
 自分の作業として現在しているのが「まるみ君」に学ぶという、中小企業企業経営者小林洋一社長の思想紹介です。日本人らしい実践的でありながら理想を追う社長さんの話です。こういうのがあるとがぜんやる気が出るというのは、やはり体質でしょうか。

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2014年3月25日 (火)

町田市で「文芸交流会」集会開催のお知らせ=外狩雅巳(投稿)

 文芸同人会の枠を超えた自由な議論を交わせる場の創設を作ろうとしています。
  今年は二月に町田公民館で行いました。まだ相模文芸会員が主体の合評会です。
 昨年末の会合からは文芸同志会の伊藤昭一氏が参加するようになりました。
 伊藤氏は同人誌作品の読みが深く独自の切り口で時代と作品を観察します。長らく各地の同人作品評をサイトで紹介し全国から注目され検索されています。
 彼の文学視点を論じ会い磨き上げる場としての会合に転換したいと考えました。同人雑誌の作品は同人誌仲間の会合で相互に感想を述べ合っておしまいです。数人から十数人の合評会での感想を作者は大きな期待で待ち望むのです。合評会を開催しない会もあります。年に一二回、発行時に行う会もあります。数編、十数編の一冊の作品を一度の三時間程度で合評してしまいます。
 それも欠席し掲載する事のみを楽しみにしている作者も多数います。その不備を訂正する為、相模文芸は月二回程度の合評会を行います。一作品に二時間近くもかけて全員の感想を述べるのです。それでも不満でした。印象批評主体の感想を延々と行うからです。かつての「関東同人雑誌交流会」に出席したことで、深い読みと文学論を知り感動しました。
 中心の読み手東谷氏は「文芸思潮」誌に関東同人雑誌評として発表していました。昨年の氏の死去により交流会は行われません。残念でなりません。
 そこで、伊藤氏との討論する町田集会を基盤に近隣の同好者を呼ぼうと考えました。3月29日(土)町田公民館・第一和室で今後の方針を話し合います。関東交流会のミニ版に発展させたく同好の士を求めています。方針確定後は、五月には発進したいと思います。テーマと論者を決めて近隣の同好者に案内する予定です。
 地域で文学活動に関心のある方は、見学参加自由ですので、当日会場にいらしてください。

 町田市・文芸交流会3月29日開催要項
会場:町田公民館・第一和室=〒194-0013東京都町田市原町田6-8-1(町田センタービル6・7・8階)
電話:042-728-0071
日時:3月29日(土)14時より。
出席者:外狩雅巳(作家)、伊藤昭一(文芸同志会)ほか。
参照:<作家・外狩雅巳のひろば

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2014年3月23日 (日)

「大地の記憶」作品への御意見に対して=外狩雅巳氏の回答

 文芸同志会通信で私の掲載作品「大地の記憶」にご意見や注文を頂き大変感謝しています。作品の内容やあり方への主に二つの御意見だと理解します。
 一つは、作品の筋についての注文ですね。登場人物を庶民にし、生き様を追う方法ですね。
 二つ目は、作品の在り方ですね。時代描写は寸描にして説明主体で終わらせる提案ですね。
 いずれも貴重な御意見だと思いますのでそれぞれについて著者の考えを述べます。指導者や歴史上の人物を登場させることの欠点は判っていましたが時代を前面に出したかったのです。
 その上で、今後は庶民やその生活なども視点を変えたり章を変えたりした書き方で登場させたいですね。
 人物に沿って書けば視野は狭くなるが息遣いが書けるのでリアルになるでしょうね。指導者と庶民。男と女。敵対する両陣営のそれぞれを視点を変えて独立章で登場させれば良いでしょう。
 この方法は文章力が問われますので自信はありません。会話や動作の他にも筋で深化させるとか考えます。当初はそこが困難で切り口を工夫し、作りも工夫して何とか読者との共通認識を築く方法を考えました。
 で、思いついたのが二つ目の作品の在り方なのです。読み物にしなければ書けるかなと考えました。歴史説明の変化球を繰り出せば読んでくれるかなと思いました。
 小説に拘らなければ意見発表は出来そうです。一般的でない姿の作品でも読まれたら良しで行くことにしました。
 将に提案のとうりです。時々描写があるが主体は著者の歴史説明。それを飽きさせない工夫をしました。
 教科書は堅苦しいが歴史を深く正しく書いています。読み物は歴史から飛躍し自由に人物を操作します。
 混ぜ合わせた作品は新ジャンルとして広まるかもと考え、何でもありで固定観念を捨てました。
 作者の意見が一番表明出来るスタイルを用意してそこで思い切り歴史観や自説を述べたかったのです。
 小説として扱われなくても良いのです。歴史解説文としても扱われなくても良いと考えました。
 日本の歴史、東北の歴史。教科書に無い真実。物の見方、考え方を解き放ち奔放に飛び回れば良いのです。
 気の合う仲間同士の雑談では本音も言うが、多数の社会に居る時は建前で生きる大人達。天皇への疑問も、アジア史への疑問も仲間とは語り合います。それを書き物にしただけです。
 サイトの閲覧数も多いのは知っています。勝手を書くには一言位は挨拶が良いかなと思いました。同人雑誌では僅かな同人にしか読まれず、ネットでの多数の読者に驚き感謝しています。今回の御意見を真摯に受けて、構想を練り直して見ます。いずれ作品でお会いしましょう。(外狩雅巳)
(注) 「大地の記憶」は、本サイトカテゴリー「物語」にて連載中です。

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2014年3月22日 (土)

ネイサン・イングランダーさん「アンネ・フランクについて語るときにー」

「私が書くのは、寂しさやうれしさ、恋しく思う気持ち、孤独、希望、何かを失うこと…それだけです。そして感情を描写するときには、私の悲しさを書けばあなたもその悲しさが分かる、と考える。普遍性は私にコントロールできるものではない。なすべきは、記憶の集積である現実を、ストーリーとして語ることだけです」
ネイサン・イングランダーさん 記憶の集積である現実を物語る2014.3.19産経 「アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること」の著者

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2014年3月21日 (金)

「頑是ない歌」の時代

 中原中也の「思えば遠くにきたもんだ」の「頑是ない歌」の時代は、日本の人口は感じでは6千万人くらいでしょうか。なぜか身にしみる。頑是ないとは、「幼くて物事の善悪などの判断がつかないこと」だそうである。現在の人口は当時の倍でしょうか、増えた人たちが皆よく働いた。すると経済成長する。これからは人口減で、労働力の自然増はない。人口自然減で通常での成長はない。食品の輸入はそれだけ減る。モノの生産も減る。住宅も空き家が増える。過疎村で独りでは暮らせないので、都会に集まる。景気が良いわけではない。デフレは自然の法則である。でも従来の成長を目指す人たちがいる。頑是ない考えに思えて仕方がない。人はいなくなっても言葉は後世にのこる。ほんとうにー思えば遠くにきたもんだー

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2014年3月20日 (木)

外狩雅巳「大地の記憶」への意見

 外狩雅巳「北の大地」は、行替えがうまくいってないという読者指摘があった。たしかに、一部の行折れを直すと、それが後の方に関連するのに気がつかず、なかなかうまくいかないものだ。そこで、関係がないところで、内容形式に疑問がでた。
 この書き方の視点であると、大将同士の目で流れを追うので、小説的な視点ではないような気がする。歴史的な経過を追随した歴史書に色をつけたように感じる。解説もまた郷土史探究家のようなものである。
 ここは、まず主人公を軍勢の小頭のようなリーダー格に設定し、その身の上から読者の共感を誘うような手法が必要であろう。伊佐西古や伊治砦麻呂の配下の軍勢として、どのような立場で軍隊に加わったのか、その事情を語り、どのような気持ちで戦っているのかを――想像力をもって語る必要がある。
 たとえばAという山村の長、Bというサンカのような山の民という立場の異なる小大将が、それぞれの事情をかかえて、東北の権力者に従軍したことを説明するようでないと、身を入れてどこに注目すれば良いのが、わからない。山の民は、熊や鹿との狩猟で、独特の闘争感覚で肉弾戦につよく、顔に熊の爪痕があるかもしれない。農耕民ならば槍や刀の武具の扱いが巧いとか、人物像を作らねばイメージ化ができない。
 この二人は、どれだけの敗戦のなかにあっても絶対に生き残ることが前提である。歴史時間で、主人公の寿命が足りない場合は、その子供に登場してもらい、話を続ける必要がある。それとも、全体の歴史のはじまりがあるので、戦いの一場面だけを描き、その後を歴史的に説明して終わらす方もありか。

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2014年3月18日 (火)

著者メッセージ: 朝井リョウさん 『スペードの3』

瑞々しい感性。同世代のありのままを切り取る鋭い観察力。
  インタビュアーの方から、このような言葉で紹介していただけることがよくあります。もちろん、いいことを言っていただいているわけなので、嬉しいしありがたいことなのですが、私は、なんともいえない気持ちになってしまうときがあります。なぜならば、私がある作品に対して「感想、伝えづらいな……」と思ったときによく使う言葉に、「瑞々しい感性」と「鋭い観察力」が含まれているからです。
 私は、二十歳で作家デビューをしました。二十二歳で大学を卒業し、その春にある企業へ就職しました。そろそろ、学生作家と呼ばれていた期間よりも、サラリーマンとしての期間のほうが長くなろうとしています。その中で沸き立つように「書きたい」と生まれ出てきた感情が、『スペードの3』のもととなりました。
 社会人として働いている上で沸き立った感情を書く。瑞々しい感性と言われるようなものに頼らない。その他にも、私がこの小説で果たしたいと思ったことはたくさんあります。
 「ミステリー小説に挑戦したい」という野望や、比喩の量を削りつつ魅力的な文章を書けるのかという挑戦など、これまで胸の中に秘めていたものに、ようやく手をつけ始めることができたような気がしています。この小説の感想が、朝井リョウが書くものへの本当の感想なのかもしれない。そんな予感が芽生えています。    (朝井リョウ)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2014年3月15日号 より)

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2014年3月17日 (月)

大西巨人「神聖喜劇」と戦争体験

 先ごろの「戦争と文学を考える」のシンポジウムで、奥泉光氏は、開高健がベトナム戦争を取材してる時代に、大岡昇平がレイテ戦記」を書いており、大西巨人が「神聖喜劇」を書いていたと語り、日本の戦争文学はいまだ体験化の過程のなかにあるーーという話をしていた。浅田次郎氏は「戦争文学には日本の近代文学が保存されている」などと、各氏興味深い話をしていたが、自分の書いたメモが読みにくく、いまだにまとめられないでいる。川村湊氏は、原爆と原発の関連性を語り自衛隊をえがいた野呂邦暢「草のつるぎ」などが、自衛隊の存在の是か非かの視点でしか論じられなかったような話。そのうえで、現代は三島由紀夫の説いた国軍化に行ってるが、その形が米軍の傭兵としての方向に行ってしまっており、三島の意図とは異なるのではないか、というような話だった。
 
遍路さま、コメントでのご指摘ありがとうございます。
訂正しました。
 追記=「戦争と文学を考える」の記事も、意味が不明でしたので、現在の政治家において、「日本の戦争史と現在の政治の動向から、このような意見交換ができるのは、最後になることにならないようにしたい、という未来への予感を示す意見になっていた。」としました。
 おそらく、意見の中に秘密保護法によって、権力の取り締まりを受けてしまうようなこともあるかも知れずーーという意味だと思う。たしかに太平洋戦争の時は、新聞も国民も戦争反対の声を出さなかった。

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2014年3月16日 (日)

デジタル化と本の市場= スターツの戦略

スターツ出版「変化の芽」を社内共有
「ケータイ小説では作家に会いによく地方に飛んでいましたが、ベリーズカフェでは都市部在住の方が多い。読者も作家もケータイ小説とはまた別の、新しく入ってこられる人が中心です」
 売上げは紙の書籍が主軸ながら、広告や電子書籍も年々伸びている。
 「ベリーズ文庫は昨年4月創刊ですのでこれからですが、ケータイ小説文庫の方は日販のデータでは書店で年に平均3.2回転しています。つまり『外す作品は少ないが初速型』と従来は見られがちでしたが、じつは回転率がよく、実際、重版率も高い。
 また、ユーザーアンケートでは8割が『サイトに掲載された小説の書籍版を買ったことがある』と答えており、しかも併読した本は野いちごで固まっている。それもあって書店に棚セットを送ってみたところ、売上げがグンと上がり、『棚ができると売れる』と認識いただけるようになってきました」
 版元が自らサイトを持っているからこそ、サイトと紙で一貫したブランド価値を提供でき、ゆえにロイヤリティの高いユーザーが生まれる。それが同社の強みだろう。

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2014年3月15日 (土)

書評 「詩文集 生首」 辺見庸・著<阿部浪子:文芸評論家>

「ちきゅう座」より書評 「詩文集 生首」 辺見庸・著 著者の辺見庸氏は、最近のエッセー「水の透視画法」のなかに、青い花の青さには清冽にすぎるような「危うい気配」もないではないと書く。詩文集にはオレンジ色もでてくるが、ブルー系の色がじつに多い。「危うい気配」は、身を低くした人にして感じとれるもの。「音もなく近づいている災厄」、これを想えば、どきりとする。詩群からは怖さもまた、漂ってくるのだ。

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2014年3月13日 (木)

同人誌「相模文芸」第27号(相模原市)

【「アクシデント(墜落)」宮本肇】
 これはC―46という米軍から自衛隊に譲られた軍用輸送機が故障で墜落する。乗員のただ一人だけが助かったという。そこで、なぜ助かったのかというところに話の重点を置いている。まず読者を面白がらせようとした創作意欲に満ちたものである。しかし、作者の追求する面白さと別のところに面白さをがある。まず、民間人軍人を問わず乗ることが許可されたら、事故などアクシデントが起きたら、自己責任とするという誓約書を書く。ここで米兵、自衛隊員、民間人が計13人が乗り込む。それから離陸して飛行するまでが、詳しくリアルに描かれている。面白いのは、このようなことが、行われているとすれば、軍用機であれば必要に応じて、米国の軍用飛行場まで行き来することが可能であるという推測ができることである。
 話では軍用機は洋上で墜落し、主人公のみが助かる。主人公は、事前に墜落しても死なないコツ知っていたから、というSF的な小説になっている。奇談である。問題点といえば、墜落して絶体絶命のところをどのようにして、脱出したかの過程がない。読者が一番読みたいのはどのようにして、そうなったかである。映画「ダイハード」なども、実際にあり得ないことで、危機を脱する。人々はその嘘を楽しみたいのである。そこがずれているところが面白い。
【「あの日あの時」吉野さくら】
 このエッセイの優れているところは、まず初めに自分がこれから何を書こうとしているかが記されていることである。そのため、そのことかと思いながら、先に進める。これから何が出てくるか解らない書き方をされると、(予感さえない)まず何か読む義理でもない限り読まないものである。
  ここでは、記憶にあるものを書きとめて「生きてきた」という感慨を深くしようとするのだとある。まさにエッセイの本質をとらえている。
 その書いておきたいことというのは桜の季節の「茶室披き」である。庭の様子などが描かれている。蹲(つくばい)のある日本庭園のお茶会の典雅なひとときを思い起こす。そして、今はマンションの一角に暮らしてそれを思い起こすという、大きな落差を設定している。なかなかの抒情派である。短く軽く書いているが、当時の記憶と時間の経過をたどっていけば、長い文学作品できる姿勢が感じられる書き方と素材である。
【「万朶の桜」外狩雅巳】
 本作はネット「作家・外狩雅巳のひろば」に掲載したものを推敲したもの。最初の章で、中国大陸で戦闘する部隊の話がある。次章で、東日本大震災をきっかけに、母が亡くなりその一周忌に子供たちが集まる。そこから、軍曹であった父親から教えらえた「万朶の桜」 の歌を思い起こす。
 これで、前段の戦闘場面は父親の体験を想像したか、聞かされたものだとわかる。繋がりのない話を並べるという手法は詩の形式であり、散文詩である。その効果はよく出ている。
 ちなみに岩成達也「詩の方へ」(思潮社)によると、詩の特徴は、言葉、抒情、行分けによって、「異なる意味を創り出す」「概念の束をつくることで散文になる」「抒情は感受性に訴える」「行分けは散文でないという記号」「連続しているとは限らない」「読み手の洞察力を期待する」「第2の意味の概念をつくる」--
という要素があるとしている。小説のように読めて、じつは散文詩であったーーという作品への挑戦と読める。
紹介者「詩人回廊」北一郎

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2014年3月12日 (水)

【文芸月評】(読売新聞3月8日)。(文化部 待田晋哉記者)

【文芸月評】突き抜けた空気漂う 「いる社員、いらない社員」(プレジデント)、「人口減少の真実 甘く見るな!本当の怖さ」(週刊東洋経済)。/羽田圭介さん(28)の「メタモルフォシス」(新潮)/橋本治さん 「すばる」では、1月号から短期連載された橋本治さん(65)の「結婚」/アメリカ文学者の柴田元幸さん(59)編集の季刊誌「MONKEY」2号は、「猿の一ダース」と題して編集長お勧めの英語圏の7人、日本人4人の11作を並べた。
 『千夜一夜物語』を下敷きにして、お話で救われる人間がいることをさり気なく感じさせた村上春樹さん(65)の「シェエラザード」。田舎の中学の同窓会に出た落ち目の女優が、小さな転機となる夜を迎える川上未映子さん(37)の「彼女と彼女の記憶について」。小野正嗣さん(43)の「ウミガメの夜」は、旅に出た落ちこぼれ大学生3人組とウミガメの産卵をめぐる出来事が、海辺に浮かぶ幻の風景画のごとくきらめく。
 「早稲田文学」7号は、現在の不定期刊を次号から季刊とし、次回の新人賞を日本文学者のマイケル・エメリックさんが選考すると発表するなど話題が豊富だ。小説は、雪舟えまさん(39)の「とても寒い星で」に目が留まった。家の気持ちを聴く「家読み」と仲間たちが織りなす淋(さみ)しげな世界は、清潔な詩情が漂う。
 小池昌代さん(54)の「たまもの」(群像)は、40歳のころに昔の恋人から男の赤ん坊を預かり、育てることになった女性を描く長編。母親にとって息子は、小さな恋人のような存在だ。しかし女性と男児の関係は、血がつながってないだけ、より不安定に異性としての一面がちらつく。危うい興趣があった。(文化部 待田晋哉)

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2014年3月10日 (月)

文芸同人誌評「週刊読書人」(2014年02月28日)白川正芳氏

「屋上」81号より三木ふみ「暮らしの風景」から「一匹の蜂」・鈴木岬「物置ストーリー」、「宮沢賢治研究 Annuai」23(宮沢賢治研究学会イーハトーブセンター発行)より「宮沢賢治ビブリオグラフィー」・平沢信一「吉本隆明の死と今後の賢治研究」
創刊号は2誌。「石林」(発行所日本大学芸術学部文芸学科)より山本早紀「ほしかげ」、「風紋」より和田ヒロミ「めまい」
第十回森田雄蔵賞は米沢朝子「魂魄」(高知市の同人誌「蒼空」所属)
よしのあざ丸「空港まで」(「季刊午前」49号)、島田勢津子「熱風、のように」(「黄色い潜水艦」59号)、射場鉄太郎「沢津昭八の昭和史」(「AMAZON」1月号)、祖父江次郎「落日の光景」(「季刊作家」82号)、近江静雄「志津川」(「仙台文学」83号)、和田伸一郎「近況断片」(「クレーン」35号)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめより)

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2014年3月 9日 (日)

浅田次郎氏における百田尚樹「永遠のゼロ」350万部の意味

 日本社会文学会のシンポジウム「戦争と文学を考える」を聴きに行ってきた。≪関連記事:浅田次郎氏、奥泉光氏など「戦争と文学を考える」シンポ開催=東京≫そこで、終わりころに百田尚樹「永遠の0」の作品の賛否の話題になった。
 そのなかで、浅田次郎氏は「350万部売れたというのは、小説の世界への貢献が大きい。だいたい100万部以上売れたら、それ以上は、普段は本を読まない人が買ったということです。これは、これだけの人たちが、まだ本を読むのだということで、業界における貢献と、我々(職業作家)に勇気をくれます。」と語る。ちなみに浅田氏は、「永遠のゼロ」を読んでいないそうで、「百田氏は知っています。作品内容の賛否はともかく、本人はいい人ですよ。彼もいろいろ苦労しているのですよ」と、同業擁護。
 現在に至るまで、どれだけ読書人口が減っているかは、職業作家が一番よく知っているということだろう。

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2014年3月 8日 (土)

 石川智健 『エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守』

 アメリカでは、経済学によって犯罪を分析することが盛んに行われています。ノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカーや、世界で400万部以上のベ ストセラーとなった『ヤバい経済学』の著者である経済学者のスティーヴン ・レヴィット。殺人を経済学によって分析したゲアリー・E.マルシェ(ロ ジャーズ州立大学の准教授)などは、犯罪の分析や抑制方法を研究しており、 それらを活用して実際に不正を見抜いた事例もあります。今や、経済学の分 析手法を犯罪といった社会問題に当てはめるのは、一つの学問となっている と言っても過言ではありません。
 もし、日本の警察に、経済学の知識を持った人間がやってきて殺人捜査をし たらどうなるのか。 本邦初。 この言葉を使うにはいささか勇気がいりますが、今回書かせていただいた小説は、新しいアプローチのミステリー 皆様、〝バイアス″という言葉をご存じでしょうか。経済学でよく使われるもので、「偏見」や「偏り」という意味です。本作に登場する伏見真守は、行動経済学者として捜査の難航する特捜本部に派遣され、連続している殺人
 事件を担当します。経済事件でも、政治事件でもなく、殺人事件を捜査するのです。
 どうして経済学者が殺人事件を?  そう考える方もいらっしゃると思いますが、実は殺人事件の解決に経済学の 知識が有効だという論文がアメリカで発表されています。今回は、それをベ ースにして物語を構築しました。
 経済学者が殺人事件を解決できるはずがない。私も最初はそう思いました。
 しかし、これこそが経済学でいう〝バイアス″なのです。どうか、偏見にとらわれず、物語を楽しんでいただけたら幸いです。です。<石川智健> (講談社ミステリーの館2014年3月号より) 

 警察ミステリーの初物が今月15日頃に刊 行になります。『経済学捜査員 伏見真守』のサブタイトル通り、殺人捜査に 行動経済学者が加わって事件を解決する、というストーリーです。
 経済学といっても頭に「行動」が付くだけで、数学よりはどちらかというと心理学寄りに、犯行動機を犯人の「期待値」などに置き換えて分析していく ものです。しかも、主人公の伏見が、メインキャラクターの女性刑事に懇切
 丁寧に「行動経済学」のことを教えてくれます。読んでいるほうもミステリーを楽しみながら、いっしょに経済学が学べるわけです。 担当としては、「アンカリング効果」というのが気に入っています。これは、一つの基準を相手に植え付けてからある数字を提示すると、最初の基準が判断に影響を及ぼす、という現象のことです。バーゲンの値札の、値引き前の数字が高額だとつい買ってしまう、消費者心理のアレですね。<小説現代出版部 永露竜二>

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詩の紹介・佐藤裕「色彩の氾濫―岡本太郎に」 

「詩人回廊」詩流プロムナード」に移行しました。
佐藤裕「色彩の氾濫―岡本太郎に」  読み人・北一郎

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2014年3月 7日 (金)

第8回「12歳の文学賞」に鈴木るりかさん、中濵ひびきさんなど





 小学館が 3月3日、第8回「12歳の文学賞」大賞を発表した。大賞作は鈴木るりか「Dランドは遠い」、中濵ひびき「ジョージとジョセフィーンとフィービィースペンサースミス そして彼らの庭と冒険」の2作品。「ジョージとジョセフィーン~」はロンドンで長らく生活した中濵さんが一度、英語で書き、改めて自ら翻訳した作品。
応募総数は1024編だった。大賞に2作品選出されるのは第1回以来のこと。その他の受賞作は次の通り。
◇優秀賞=「悲しみの竜」中野千鶴
◇あさのあつこ賞=「王さま歩きましょう」遠藤萌花
◇石田衣良賞=「つながり」吉村涼花
◇西原理恵子賞=「その一瞬がいやでして」逸見野々花
◇読売新聞社賞=「またたびバスツアーへようこそ」森次柚依
◇宮川俊彦賞=「キュウリが好きなカッパの話」野呂翔太


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2014年3月 5日 (水)

西日本文学展望「西日本新聞」(2014年02月28日朝刊)長野秀樹氏

題「舞台は学校」
片科環さん「曙さす」(「独り居」3号、福岡市)
白石春菜さん「ポニーテール」(「しゃりんばい」36号、宮崎市)「高校生の広場」掲載、同誌より曽原紀子さん「いりす」
「すとろんぼり」13号(福岡県久留米市)は松原新一さんの追悼特集
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめより)

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2014年3月 4日 (火)

第57回農民文学賞候補作品!野川氏、古岡氏など

 農民文学賞(農民文学会主催)の選考委員は、中沢けい(作家・法政大学教授)、籠島雅雄(元「群像」編集長)、北畑光男(詩人)などの新メンバーのほか木村芳夫(農民文学会会長)、飯塚清治(同文学会事務局長)の各氏である。
 最終候補作品=小説部門・野川義秋(埼玉)「官山」、古岡孝信(大分)「石舞台」。詩部門・山田清吉(福井)「土偶」。評論部門・和木田俊作(京都)「農業に尽くした物語」。


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2014年3月 3日 (月)

外狩雅巳「大地の記憶」(8)解説・古代東北と日本歴史

 私の実家は仙台市です。太白区富沢です。沢とは丘陵地からの水の流れ下る谷で河に続きます。近くには,金剛沢とか金洗いなどの地名が残っています。金を掘ったり洗ったりしたようです。
 大和政府が成立後短期間に強国になった一つに経済的な基盤があったと思います。
 東北征服は経済から考えると資源の獲得でしょう。馬と鉄と金は当時の東北の特産品でした。未開地が広がるので放牧に適しています。あまり寒くない南東北や関東は名馬の産地です。
 那須地方の豪族・那須与一は馬上からの弓が得意です。馬と武将の話は多く残っています。
 鉄は武器製造の必需品です。古代に行ったたたら製鉄の痕跡が多く残されています。
 白村江敗戦で大陸からの輸入が困難になり国産を急ぐ事は国防の緊急課題でした。現在でも変わらず金は世界共通の通貨価値があり保有量は国家経済の象徴となっています。
 かっては紙幣は兌換券と刷り込まれていて国立銀行が金との交換を保障していました。宮城県から金が産出したという国家の慶事で大伴家持の記念歌は万葉集に残っています。律令支配体制を確立させて税金として馬や金や鉄を大量に保有し強国になる予定なのです。
 そこに無理があります。軍事の経済の民政の無理を強権で推し進める歴史がありました。648年に磐船の柵を作り武装移民で守らせて以来百年間の国家プロジェクトが続きます。
 唐帝国の日本征服を恐れ多くの蝦夷兵士を九州防衛に移住させました。強い蝦夷に頼りました。現地人を強制退去させ砦を作り武装移民を送り込むと、田畑を作り自給自足させます。
 追われた現地民や負けた捕虜をドンドン南日本に移します。百万人移民計画の記録もあります。
 百済の応援で唐と戦ったのは大和政府の失策でした。二万人以上の兵士を失ったのです。当時四百万程度の人口の中での二万人です。今なら五十万人です自衛隊の倍です。
 艦隊も全滅です。国内の予備艦隊は大切に使いました。東北征服の虎の子です。北の新天地開拓の為に北陸から北海道までも何度か戦闘航海した記録も残っています。坂上田村麻呂はその総仕上げの大将でしょう。青森まで征服してしまいます。
 802年に胆沢城・803年に志波城建設と岩手北部から青森にかけて制圧しました。そんな百年戦争の中での特筆する日本軍敗戦である紀古佐美将軍の北上川戦記です。
 白村江の戦では追撃戦で伸び切った隊列を分断され包囲殲滅戦の敗北となりました。蝦夷兵も沢山捕虜として長安に送られました。彼らは日本軍敗北の実態を知っています。
 沿海州から北海道まわりで帰還した蝦夷兵がその戦訓を持ち帰ったと仮定しました。その仮定の上での789年の古佐美軍撃破作品を書いてみました。
■参考≪外狩雅巳のひろば


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2014年3月 2日 (日)

電子書籍を読んだことがありますか?アンケート

Q1】電子書籍を読んだことがありますか?(有料・無料にかかわらず)

・はい…46.7%  ・いいえ…53.3%( 講談社『BOOK倶楽部メール』 2014年3月1日号より)

【Q2】電子書籍を何で読みますか?

・読んだことがない…52.8%  ・パソコン…26.1%  ・スマートフォン…16.6%  ・電子書籍対応タブレット…10.1%
  ・電子書籍専用端末…8.2%  ・携帯電話(フィーチャーフォン)…2.9%
  ・その他…0.8%

【Q3】現在電子書籍を読んでいる方>紙の本と電子書籍の利用比は?

 (紙 対 電子)  ・0 :10…1.5%  ・1 : 9…1.3%  ・2 : 8…0.6%  ・3 : 7…1.1%  ・4 : 6…0.4%  ・5 : 5…1.1%  ・6 : 4…1.1%  ・7 : 3…2.5%  ・8 : 2…1.7%  ・9 : 1…34.5%

【Q4】電子書籍を読んだことがない方>読まない理由は何ですか?

・紙の本で読みたい…39.6%  ・電子書籍端末を持っていない…31.8%  ・興味がない…11.6%
 ・電子書籍の価格が高い…7.4%  ・利用の仕方がわからない…6.3%  ・操作性が悪い…4.2%  ・その他…4%

【Q5】携帯電話やスマートフォンはどちらの手で持ちますか?
  ・ほぼ右手…31.6%  ・ほぼ左手…45.3%  ・決まっていない、携帯電話を持っていない…23.2%

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2014年3月 1日 (土)

同人誌「季刊遠近」第52号(東京)

【「兄の恋人」難波田節子】
 主人公の私には、兄がいる。四人家族だったが、父親は他界している。私は、母親が愛している兄が恋人を作るたびに、兄の面倒なことの手伝いをさせられる。話の前後に父親と母親の出会いから、その恩人に対する父親の人情あふれるエピソードが入る。
 これは古き良き時代(と今は思う)日本の絆の強かった社会構造へのオマージュであり、同時に、愛に姿を変えた絆の強さ、その奪い合いの構図を示している。特に後半で、私が兄が二人目の恋人と濃厚な絆を確認して、心を乱すところは、まさに兄が私の恋人であったことを示して力が入っている。日本社会は、お互いの存在を奪い奪われる関係で、承認しあってきた。
 兄もまた妹を所有する絆をもっている。「私」が昔なじみの男と結婚すれば、おそらく妹を奪われたと思うことだろう。もともと兄は、恋人を誰かから奪っているのだ。私の存在を誰かに奪われて何が悪いということになる。
 こうした絆の関係を明確にテーマ化するなら、双子の兄妹に設定した方が良いのであろうが、作者はそうした刺激的な設定を避けているようだ。穏やかな作風で、幾分か損をしている傾向がある。現代の「絆」という言葉のバーゲンセールのなかで、それが本当は何であるかを示した一石であるように思う。「
紹介者「詩人回廊」北一郎

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