« 霞んで見えない時代に=北一郎の文芸批評論(1) | トップページ | 外狩雅巳氏(投稿)文芸同人会[文学市場]について »

2014年2月17日 (月)

文芸同人誌「さくさく」第57号(東京都)

 本誌は「文学市場」というグループが発行している。会則に、「当会は文芸、文学を楽しむ会です」とある。さらに補足として、「原則として締切日までに投稿された作品は運営委員の判断において、書き直し、または不掲載の場合もあります」とある。
【「小説教室」坂本良介】
 ――ドアを開ける。あけたものの、開けたドアがなぜドアなのかわからない。――とはじまり、入る空間がないのに、逆名(さかな)もも子さんが、小説教室としてやってくる。そのことで、小説教室が存在する。逆名さんは、大学生時代に先生に随筆を書くように言われ、書いたら小説ですね、といわれたという。――これは文章表現に関する散文であり、小説論でもある。表現に用いられる言葉そのものが、すでに誰かによって使用されたものであり、自分のだけのものではない。それをもって書いた小説がどのように独創性や独立性、自立性が証明できるののか、創造性への疑問を含んだ話になっている。ポストモダン時代における純文学小説の困難性を示した哲学的小説に読める。
【「映画日記35」S K】
 これだけ多彩な映画鑑賞ができるのは特殊立場にあるのであろう。実に有益で勉強になる。「批評の対象は、映画だけではない。受けて自身も批評されているのである」と記しているが、それは映画だけに限らない。「読書雑記」「エセー13」も頭の体操になる。小説「おいしい教室」まで書くとなると、奇妙な味の作家である。
【「鵤(いるか)党奇談―一番勝負」新開拓巳】
 自在な筆遣いで、楽しませる時代小説。
【「元旦に囲んだファミリー」宮島研】
 家族麻雀の楽しい想い出だが、書き出しに工夫があって、散文として楽しめる。 
 発行所=〒111-0055東京都台東区三筋1-4-1-703、坂本方、文学市場。
紹介者{詩人回廊}編集人・伊藤昭一。

|

« 霞んで見えない時代に=北一郎の文芸批評論(1) | トップページ | 外狩雅巳氏(投稿)文芸同人会[文学市場]について »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 霞んで見えない時代に=北一郎の文芸批評論(1) | トップページ | 外狩雅巳氏(投稿)文芸同人会[文学市場]について »