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2014年1月 3日 (金)

豊田一郎「屋根裏の鼠」に読む「文芸的社会史観」(6)

 豊田一郎「屋根裏の鼠」(詩人回廊)は、国民はどの国家に所属するかを選べないと書いている。それを「屋根裏の鼠」という境遇の例えにしている。国家は線引きした領土である。それだけのことで、領域内の生活者を国民とし、税金や制度を強制する。それを社会に還元するという。強制する側とされる側に奇妙な歪みが生じる。国家に雇われた自称公僕は、国民としての日常性をはく奪し、生ける人形にする仕事に励む。その典型が軍隊である。集団で、腕を曲げ手を平らに額に付ける。脚を高く上げて歩く。これが国家(すていつ)の形である。日常で、独りでこの形をして街中を歩いたらば、変り者か精神変調者に見える。
 そこから、ある状況においては、国民(ねいしょん)を統治する者とその命令を実行する者は、国家(ステイツ)となり、その使命感によってどこかに変調をきたす。しかし、その場合において、国民はそれを受け入れることが多い。この関係を作者は「屋根裏の鼠」と考えるところが文学的な表現ということになる。

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