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2014年1月24日 (金)

文芸同人誌「構想」第55号(長野県)

【「織田作之助を訪ねて」(四)藤田愛子】
 無頼派といわれた「夫婦善哉」の作者との交流記であるが、前回は「大阪文学」という雑誌の創刊号の頃と、華のある20代の作者の恋愛事情があり、織田がうまく出だしが書けないと、机を窓の外に放り投げたというエピソードなどがある。戦時下での「大阪文学」1月号が出た話。それと、小説「夫婦善哉」が、戦時中の時代背景にはまったく触れていないことについてーー「作之助が書きたいのは人間の思想や心理ではなく、あそんだあとの財布のなかに何円何銭残っているか、蝶子の貯金が何円になっているかその即物的リアリティが重要なのである」と記している。人間の肌に食い込むような存在感の創造への一つの見識である。
【「中江兆民と幸徳秋水」(二)崎村裕】
 前号では、中江兆民の思想と生活を丹念に調べ、その人となりを浮き彫りにしている。今号では、その影響を受けた幸徳秋水の生活と思想を紹介する。明治100年を過ぎて、時代と風俗が変わっても、思想的には現代でも理解できる。国家と国民の関係の基本は変わらないところが多い。そのことをよく感じさせるのは、人物の人間性と思想を良く結びつけている視線であろう。
発行所=〒389-0504長野県東御市海善寺854-98、「構想の会」。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

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