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2014年1月17日 (金)

第150回直木賞・浅田次郎氏の講評 (上)(産経新聞より)

  第150回直木賞は、朝井まかてさん(54)の『恋歌』と姫野カオルコさん(55)の『昭和の犬』の2作に決まった。選考委員の浅田次郎さん(62)が選考の経緯について説明した。「票を開けてみると、『恋歌』と『昭和の犬』(の得点)が抜けていた。そこから討議が進みましたが、この2作の点が高く、しかも拮抗(きっこう)していたので、2作受賞に決定いたしました。2作ともに甲乙つけ難く、いずれも十分に直木賞の水準に達していると思います」
 「姫野さんは今回が5回目の候補ですが、たいへん個性が強く、そのたびに賛否両論が分かれる作家です。最も重要なのはオリジナリティーだったと思います。これだけ出版点数が増え、同じような小説が受け入れられやすい市場の中で、姫野さんはデビュー以来、ご自分の世界というものを真っすぐ書いていた孤高の作家です。今日、小説がまま影響されやすいコミックやゲーム、映像といったものとは全く別次元にある、小説の世界に根を張った小説であると感じました。
浅田次郎さん「賞がねじふせられた」(産経2014.1.1付け)
 「朝井さんはずいぶん時代小説をお書きになっている。私も幕末ものを書くが、幕末の水戸というのは時代小説作家にとってかなりアンタッチャブルな世界。明治に至るまで内ゲバが繰り広げられ、殺戮(さつりく)が繰り返された。そのため水戸藩は尊皇攘夷のリーダーであり明治維新の火付け役でありながら、明治時代には元勲が1人も出ていない。それは、みんな死んでしまったから。だから、これを小説にするというのはすごく難しい。それをテーマにしたというので、大丈夫かな、これを書ききったら大物だぞと思ったら、見事に書ききった」
 「姫野さんの方が、若干上でした。ただ、かなりの僅差。ご両者とも最初の得点上は、まったく×がついていなかった。そのほかの作品は、相当水があきました」
 「直木賞というのはその作品を評価するのが一番ではあるが、選考委員としては直木賞作家というタイトル(を与えること)に対し責任を持たなければならない。(候補者には)この先にも代表作があるかも、という心理は確かに働く。その意味で、初候補の場合『もう1作待ちたい』という意見が出ることはあるが、今回は出なかった。かなり珍しいケースだと思います」
--姫野さんの個性とは
 「今日の文学の常識で言うならば、支離滅裂。文章にある基準を置くならば、それをそれている。内容的にも、いわゆる小説の骨法というものから少しずれている。つぎはぎだらけに見えるけれど、一歩下がってみると、とても美しいパッチワークになっている。なんでこんな表現ができるんだろうと、驚きながら読み進めた。そしてラストシーンでは、心から感動しました。犬の散歩の途中で、ふと見上げたらそこに青空があった。その青空のような感じですね。つまり、常識的な論理性が当てはまらない。でも、姫野さんの小説は誰かに似てる、誰かに影響されているということも感じない。どのジャンルに分けることもできない。そのオリジナリティーは何者にも勝る」

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