【文芸月評】哀しき人間への慈しみ(2013年11月29日 読売新聞)
.浮き沈みする生への共感
≪対象作品≫
村上春樹さん(64)「文芸春秋」12月号に寄せた短編「ドライブ・マイ・カー」。
黒川創さん(52)の「深草稲荷御前町」(新潮)。
前田隆壱(りゅういち)さん(47)「アフリカ鯰(なまず)」。
荻世(おぎよ)いをらさん(30)の「宦官(かんがん)への授業」(文学界)。
北野道夫さん(29)「京都ジャンクション」(すばる)。
横田創さん(43)の「丘の上の動物園」(同)は、赤ん坊をトイレで産んだ精神的に幼い女の内面に幼い筆で迫る。
広小路尚祈(なおき)さん(41)の「じい」(群像)。
「文学界」の新人小説月評で評論家の清水良典さん(59)は先月の新人賞受賞作に触れ、小説の常識的な書き方を覆す「奇妙な小説」が「一種類型的なトレンドになっている」と指摘した。東日本大震災の復興が物理的に進まない一方、ネットなど仮想空間は加速度的に膨張する。異様な時代に肉薄する新しい作家の文学の形が問われている。
連載では、宮本輝さん(66)の大河小説「流転の海」第7部「満月の道」(「新潮」昨年1月号~)が完結。(文化部 待田晋哉)
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