デジタル化と本の市場= 映画と原作本のような連携に
ネットの読み物は、結局は紙の書籍化に転換しないことには商業ベースに乗らないことがわかってきている。最終的には、映画いと原作小説のように、連携するがジャンルが異なるという認識になるのではないだろうか。
金沢伸明氏によるサバイバルホラー「王様ゲーム」は、モバゲータウン(現・E★エブリスタ)に投稿。書籍版(双葉社)はシリーズ累計500万部のヒットになった。サイトで知った読者が、書店やコンビニで紙の小説やマンガを購入。逆に紙から入った読者が続きを読むためにウェブにアクセスする。そんな好循環が生まれた。毎日新聞社による学校読書調査でも中高生が読んだ本のベスト5に何年もランクインを続けている。金沢伸明氏は「たまたまモバゲーでケータイ小説の存在を知った。中高生が多かったので、共感してもらえるように学校を舞台にして主人公は高校生。何かゲームをやらせよう、普通のエロい王様ゲームじゃつまんないし、じゃあホラーかな……と」
読者から比較されたのは高見広春『バトル・ロワイアル』と山田悠介『リアル鬼ごっこ』だという。同作では死の恐怖に晒された高校生たちの醜い感情の噴出や、ぎょっとするような暴力が描かれる。
「インパクト重視ですね。非日常感を味わいたい人には必要だろう、と。『進撃の巨人』も、グロテスクなものって気になって見ちゃうんですよね、人は」
金沢氏は同作の執筆を始めるまで、ほとんど小説を読んだことがなかった。しかしアップを始めて反響があり、設定の矛盾の指摘があれば連載を遡って修正し、「アップしたら5分で来る」という読者からの感想や意見を元に執筆作法をマスターした。
「1日2ページくらいずつ更新、展開が早くないとみんな飽きちゃう、他の作家が3ページかけるところを2行で書く。短文でも受け手に残るメッセージを込めた言葉を選びます。あとは次が読みたくなるように『引き』を毎回作りますね」
「王様ゲーム」は最初にネットに上げるものがコアとなり、本、コミック、映画、ソーシャルゲームに展開するときには各媒体に適したアレンジがなされている。明確な読者像に基づき、メディアやチャネルに合わせた創作技法を駆使してニーズを満たすーー。商売の、そしてエンタメの基本だが、それを徹底している。
「王様ゲーム」以外の新作もエブリスタで執筆中。
」(「新文化」2013年10月10日号より)
| 固定リンク
コメント