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2013年11月24日 (日)

著者メッセージ: 樋口卓治さん 『失敗屋ファーザー』

 困る。悩む。もがく。 七転八倒しながらも突っ走る。 でも、愛する娘の為なら辛くない。むしろ生き生きしてくる。 仕事も家族もとことん頑張れる。 それは亡くなった妻と繋がっていられるから。
 今回、そんな男を主人公に小説を書きました。 タイトルは『失敗屋ファーザー』。失敗屋という特別な仕事をしている細野一郎と高校生の娘・清江との父娘の 物語です。

 一郎は清江と本音で話せない。気持ちがわからない。毎日、お父さんとして一生懸命、空回りしています。
 そして、失敗屋の仕事で、壁にぶち当たり乗り越えるたび、不思議と娘との 関わり方が見えてきます。
 娘の笑顔を見るだけで有頂天になったり、うざいなんて言われるとすぐ落ち込んだり、寝顔を見るだけで元気が湧いてきたり、お父さんは単純です。
 そして、その単純さは愛でできています。いつも自分の運を全て捧げてもいいと思いながら、子供の成長を見守ってい るのだと思います。 もしかしたら、世の中のお父さんはみんな失敗屋なのかもしれない。
 いつも子供にわざと失敗をやらかして、その成長をはらはらしながら見守っ ている。それがかけがえのない親子の営みだと信じて。 (文中より)
 この小説を書き上げた時に思いました。きっと、世界中の父親は失敗を繰り返しながら、お父さんを熱演している。つまり「お父さんは最高のエンターテイメント!」なのだと。                            (樋口卓治!)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2013年11月15日号より)

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