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2013年11月24日 (日)

豊田一郎「屋根裏の鼠」に読む「文芸的社会史観」(4)

人間の歴史を科学の進歩と生活面でたどり、人類を物語化しているのが豊田一郎「屋根裏の鼠」(「詩人回廊」連載))である。人類の世界観は科学の進歩を前提にしてきた。科学の進歩は人間の夢をかなえ社会を発展させるものとして考えられてきた。
 西欧思想では、神の存在を中心に人間の歴史の筋道が立てられてきた。アダムスミスは、人間の政治経済は「神の見えざる手によって導かれている」と考えた。なぜなら、資本主義の以前から、畑を耕す代わりに、服や靴を作れば、だれかが買ってくれていた。買ってもらえるかどうかわからないのに、作れば何故か買う人が現れる。この需要と供給のバランスは、神の見えざる手が機能しているからだとした。前提に、神は人間世界を真・善・美をもって人倫とするように創世したとする。
 神によって、この世界は良きもの、美しきものになっている。西欧では、これが浸透している。この作品では、終章に「卑弥呼」という神の意志の仲介者がとりあげられている。これで私は、豊田史観の根底にはアニムズム思想があると読んだのである。小説「屋根裏の鼠」の読みどころを知るには、こうした西欧的歴史観との対照がヒントになる。このように物事を裏、表、横という多面的に解釈するのを現代思想では「脱構築」的というようだ。脱××というものの言い方は、これまでの一面的な視点とは、次元が異なる視点という意味なのである。「屋根裏の鼠」では、飛行機を墜落するものという負の側面の視点でもとらえている。
 西欧ではものを造り、道具をつくることは、身体的な不自由さ、限界を克服し、自由を得ることで、進歩であった。神はそのように人間を造ったのである。では墜落事故は何なのか。それは神の与えた試練と見る。こうして同時に神の名において自然科学の真理探究がなされた。
 コペルニクスは、教会の主張する天体が、地球を中心にして惑星が動くという説に疑問を持った。たしかに地動説でもその軌道を説明できる。しかし、それは複雑怪奇で美しくない軌道なのだ。全能の神はこんな奇妙な軌道を用いるのであろうか? 疑問が出た。そこで、太陽を中心に惑星が動くという理論で軌道を読んでみた。するとどの惑星も美しい円軌道を描いたのだ。コペルニクスは確信した。これぞ、神の造ったものだ。しかし、彼は教会に遠慮して生前はそれを世間に広めなかった。同じ発見をし、世間に発表したガリレオは、教会によって死を暗示され隠居。沈黙を強いられた。「それでも地球は動いている」と呟いて。
 神の導きと教会の関係はそういうものだった。教会は神を利用する圧力団体の機能をする。宇宙のビッグバンをとなえたホーキンス博士がバチカンに呼ばれた時に、研究は自由だが、宇宙の起源は追求してはならないと言われたそうである。―かれは、そのようにしなくて良かった、とテレビ取材に応えている。

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