第17回文学フリマ(平和島・TRC)店番記
文芸同志会は、久しぶりに4人体制の店番になった。店番をするのは、読者層感覚の会得に重要視している。自分のためにだけ書くのであれば、その必要がない。大衆社会で文学活動をしようと思う人は、やはり自分の作品が社会的にどのような位置にあるのかを知っておいた方が良いと思う。文学フリマでは、人はちょっと寄ってぱらぱらと並べた本を見て、すいすいと去っていく。1時間に一冊の割合で買う人がいればオンの字である。≪参照:文芸同志会のひろば≫
今回は外狩雅巳氏と小野友貴枝氏が参加をしてくれた。外狩氏は文学作品で社会制度を意識し、変革の意思を重視する作風である。現在、詩人北一郎が外狩作品『「この路地抜けられます」の読み方』を書き、テクストとしてその作品を収録した本を制作中である。
小野さんは、最近入会した方なので、私はまだ作品全部を読んでいないが、人柄も作品もなかなか華を持っている。人間観察がしっかりしていて、読ませる。公務員で福祉関係では専門家のようだ。よい編集者に出会えば作家でもある程度成功しているのではないかと思わせるが、商業作家になるより社会福祉で貢献しているのであるから、その方が偉いのではないか。作品を読むと、女性仕事人として、腹が据わっており、かなりの手腕を発揮したことがわかる。
文学フリマで、店番をしていると、世の中が刻々と変化していることがわかる。時代の空気や風潮の定点観測になる。当会ブースでは、山川豊太郎氏の評論に関心が集まった。どうも文学フリマでは、創作より評論が有利である傾向がある。いわゆる巨大商業コンテンツに寄りそって、評論を書くと一定の読者が付くということだ。山川式評論「放浪息子」への関心の高さには驚いたが、考えてみればTRCのその日のイベントにマンガ展があったのである。その流れが文学フリマにきた可能性もある。アニメのファンが、作品に意味づけをしてやると、活字でも読むという現象が、見えてきた。それにしても「放浪息子」ってマンガをそんなに読んでいるのか、と驚かされた。
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