著者メッセージ: 山崎ナオコーラさん 『昼田とハッコウ』
毎日、仕事をするということ。
サラリーマンは毎朝、身支度をして出社する。アスリートは毎朝、ジョギングをする。魚屋さんや花屋さんは毎朝、市場に出かける。作家は毎朝、机に向かう。拙著『昼田とハッコウ』に出てくるのは、「町の本屋さん」で、
毎朝、シャッターを上げる。
この小説は、二年と一ヶ月の間、毎月、発表していった。ストックは作らず、その前の月に起きたことを発表するという体だ。そのため、「日常淡々系」ながら、選挙や震災が入ってきた。架空の街の、想像上の本屋なのだが、時代や天候の風を受けた。
小説もだが、会社も店もきっとそうだろう。電車が止まったり、台風に悩まされたり、異動があったり、「日常を大事に、毎日を同じようにやろう」と考えていても、自分の思うようには行かない日がある。それでも、とりあ
えずは毎朝身支度をするということが、日常への強い支持の表明になるのだと思う。(山崎ナオコーラ) (講談社『BOOK倶楽部メール』 2013年10月1日号より)
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