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2013年9月 4日 (水)

著者メッセージ: 佐藤友哉さん 『ナイン・ストーリーズ』

 みなさんは『ナイン・ストーリーズ』ということばを、これまでの人生で どれほど耳にしたでしょう? 元はJ・D・サリンジャーの短編集のタイトルなのですが、今やそれは多くの物語に借用・流用されています。(講談社『BOOK倶楽部メール』 2013年9月1日号より)
 トジツキハジメさんがそのまま『ナインストーリーズ』というタイトルで漫画を、九人の小説家による『源氏物語』トリビュート本は『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』で、ドン・デリーロの短編集は『天使エスメラルダ 9つの物語』となっています。
 ちなみに『九つの物語』というのは、『ナイン・ストーリーズ』のかつての邦題で、1963年の思潮社版、1969年の荒地出版社版、1969年の角川書店版が、すべて同タイトルでした。
 さらには、ミュージシャン林哲司さんのアルバムタイトルも『ナイン・ストーリーズ』で、宮崎薫さん(CHAGE&ASKAのASKAの娘)が去年発表したアルバムは『9 STORIES』で……数え上げたらきりがないので省略。
 僕が今回書いた『ナイン・ストーリーズ』もまた、その系譜に属するのでしょう。サリンジャーの魂とストーリーの神さまに捧げた、至高の一冊となるのでしょう。
 さて。みなさんの頭には、一つの疑問が浮かんでいるはずです。「なんでみんな、そのタイトルを使いたがるの? コピーの誹りを受けるかもしれないのに。せっかく自分で物語を作ったのに。そんなわざわざ」
 その問いには、こう答えるしかありません。
 逆襲。 僕たちはあえて自作をコピーに貶め、どこまで原典と戦えるのかを、どこまで現実に居座れるのかを、確認したくてたまらないのです。もちろん、コピーの最期は知っています。かならず敗北することなど、とっくに承知です。
 だとしても、コピーの側についてやりたいのです。コピーの一瞬の輝きほど美しいものはないのだから。
 マリリン・モンローのコピーとなるために生まれ、恋をする前に殺されてしまったジョンベネちゃんのように。 (佐藤友哉)

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