漫画に影響された小説?綿矢りさ『大地のゲーム』(新潮社)
現代人の微妙な距離感や形容しづらい感情を巧みにつづる綿矢りささん(29)。新作『大地のゲーム』(新潮社)では一転して、巨大地震に見舞われた近未来を生き抜く大学生を描いた。「何かが根底から覆される不穏さを書く」と筆をとった物語は、震災後の人々の心と共振する。(海老沢類)≪綿矢りささん新作「大地のゲーム」 災禍経て「生」とらえ直すー産経2013.9.25≫
舞台は21世紀終盤の大都市。7万人もの死者を出した地震の後で、寒冷化が進み平均寿命も縮んでいる。おまけに政府は1年以内に第2の巨大地震が起こると警告している。崩壊に瀕(ひん)した都市の、危険地域にある大学に残った学生たちの共同生活が、女子学生「私」の一人称でつづられる。
「危機的な状況だと頭では分かっているつもりで、やっぱり『自分は大丈夫』と思っている。欲望があり、たくましく、自意識で悩んだりせず、まず身体が動く。そんな人々のドライブ感を出したかった」と綿矢さん。徹底して生を肯定する、むき出しのエネルギーのぶつかり合いの先に希望を見据える。
死が間近にある極限状況下のサバイバルという筋立ては、英の作家、ゴールディングの『蠅の王』に通じるが、執筆中、楳図(うめず)かずおさんの漫画『漂流教室』を読み込んだ。「砂漠のような果てしなさと、子供の成長…。初読だったけど、かなり影響されている」と明かす。
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コメント
漫画に影響されようが、哲学に影響されようが、ヒントはヒント。それをベースに日本語の作品として独自の世界を展開できたのは、作者の持ち味。
素晴らしいことです。(o^-^o)
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年9月30日 (月) 09時44分