佐藤 裕 「見捨てられた兄妹」にみるイタコ的イメージ
恐山のイタコは、亡くなった人の霊を招いて、故人の気持ちを語ってくれるそうである。「詩人回廊」の≪佐藤 裕「見捨てられた兄妹」≫を読むと、そういえば我が家にもそういう状況の時期があったような気がしてくる。詩人・佐藤裕は比喩、隠喩、暗喩を多彩に用いるのだが、時折じつに具体的に見てきたように市井の現象を語る時がある。しかし、それがどれも個別的な事実を示したとは限らない。いつもそうではないにしても、確かに我が家でもこのような時期があった。全体が暗喩なのかも知れないと思いつつ、なんとなく悲しみと悔悟の情に襲われる。詩的表現と言えば、かなり曖昧で幅のある表現が特徴だが、このようにリアリズムで書いても長期的に有効ではないか、と思わせるのは収穫のうちであろう。眠った神経を叩き起こすようなスタイル。詩の世界にもイタコの居場所がありそうだ。
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