文芸時評7月(東京新聞7月30日)沼野充義
文芸時評7月(東京新聞7月30日)沼野充義
藤野可織「8月の8つの短編」多彩な構想力の連作。
佐藤友哉「ベッドタウン…」重く響く「ワスレルナ」。
≪対象作品≫
藤野可織「8月の8つの短編」(群像)/松田青子「英子の森」(文藝)/馳平啓樹「三千階段」(文学界)/佐藤友哉「ベッドタウン・マーダーケース」(新潮)。
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沼野氏は、前段に書いている。――世界的文学を論ずることで知られるフランコ・モレッティという研究者(スタンフォード大教授)の新刊「ディスタント・リーディング(速読)」(ヴァーソ社、英語)を読んでいたら「文学の殺戮場」という物騒なタイトルの論考に出くわした。モレッティによれば文学の歴史とは文学の殺戮の場にほかならず、出版された本の大部分、おそらく九十九・五%は跡形なく消えうせているという、しかし、私としてはモレッティの提示する冷厳な統計の正しさを内心認めつつも、毎月生み出され続ける豊かさを信じたいとも思う――
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