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2013年6月25日 (火)

小説の書き方の本について(下)

 森村誠一『60歳で小説家になる。』(幻冬舎新書)には、「出世できなかった人ほどデビューのチャンスあり」の帯がある。自己顕示欲が強く、調和を重んじる会社組織からはみ出す人の方が、ストレスを作品に昇華できる可能性があると説く。新聞の読み方の工夫など、実作のアイデアを生む心がけも参考になる。
 優れた書き手になるには、読み手としてのセンスを磨かなくてはならない。ロシア語と英語で創作した多言語作家、ウラジーミル・ナボコフの名著『ナボコフの文学講義』(河出文庫)と辻原登『東京大学で世界文学を学ぶ』(集英社文庫)は今年、文庫化された。著名な作家は、どんな小説に影響されたのかがわかる。
 辻原さんは「近代の三大長篇(ちょうへん)小説」として、セルバンテス『ドン・キホーテ』、フロベール『ボヴァリー夫人』、ドストエフスキー『白痴』を論じている。
 最後は翻訳家の柴田元幸さんと作家の高橋源一郎さんが、文学について自在に語り合った『小説の読み方、書き方、訳し方』(河出文庫)。様々な小説が書き尽くされ、「文学は終わった」と言われる時代に、高橋さんの言葉がペンを持つ勇気をくれる。
 ベテラン作家の森村誠一さん(80)に聞いた。創作の初心者の場合、本を通してテクニックを知ることは上達の近道になる。例えば「財務諸表」について書く場合、単なる説明では読むのが苦しい。代わりに、株主総会で登場人物が議論する場面にすれば楽しい。このように小説の「説明」の問題など、作家の先達から学べることは多い。
 一通り学んだら、好きな作家を見つけて作品を研究すること。最終的には小説を好きな人が生き残る。書くこと以外、何もしたくないタイプの人です。
 小説は結局、人間を描くものです。ミステリーのトリックは人工的に作れても、犯人は人間。どんな作品にも、自分が投影されるものです。ヤジ馬根性や好奇心が旺盛なのも大切でしょう。ヤクザの家の防犯カメラに映ったら何分で反応があるか、私は執筆のために試したことだってあります。
(2013年4月19日 読売新聞・待田晋哉記者)

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