詩の紹介 「ねぐるしい夜は」 原 満三寿
ねぐるしい夜は 原 満三寿
ねぐるしい夜は/それはゆっくりうごきだす/おとこの襞にひっそりとかくれているそれは/すえた苔の匂いと/音のない跫音をたてはじめる/老いた蛍のように/死にどころをさがして/我が身に照らしをかけようか/ねぐるしい夜は/そんなことばかりおもいつづける
「騒」第90号より (東京/騒の会2012 年6月)
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
内なる生命力の萌えが騒ぎます、幾つになっても男性の愛の機能は気になる暗示がなされているようです。老いて死に場所に近づきつつも、生殖機能を失いつつ「おれは男だ」と意識しているような、愛する力の喪失への恐れでしょうか。伝聞によると、寝たきりの老人に治療としてエロティック映像を与えると、生きる力を増したとか。おそらくそれは、自己確信への力の源としての愛の可能性を認識するためなのかも知れません。
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