「かみさんの歌」原詩夏至
かみさんの歌 原詩夏至
風呂場で、/かみさんが、/歌っている。
ろうろうたる声、/でも中国語なので、/歌詞の意味は/さっぱりわからない。それでも、/昔、/歌手になろうと/偉大音楽の先生に/基礎から/習っていたことがあるんだよ。かみさんは/よく/そう言う。/謝礼は/野菜や工場の余りの服。/当時はそんなでも/アリだった。
かみさんは/結局、/歌手にはならなかった。/ま、/いろんなことがあったんだろうな。/そうして/はるばる/日本まで来て、よりにもよって/俺なんかくっついて/今、/こうして/風呂場で歌っている/いつまでも
その遠い昔の革命歌みたいな/歌声が/居間まで/響いてくる。
ぽっかりと/静かな夜である
原詩夏至詩集「波平」より(2013年5月21日 東京 土曜美術出版販売)
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
物々交換が効く時代の話。いまは、月謝に謝礼、お中元、お歳暮に折箱などの物。月謝を品物にしたら驚かせてしまうでしょう。淡々とユーモアな視点の日常生活の描写、おかみさん風呂場に歌う光景が微笑ましい。国家間は緊張があっても庶民は別。故郷はどこの国の人でも懐かしい。革命歌で国を想う。日本の平和の中味を問うています。
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