作家の育つ場所はどこか
第12回「女による女のためのR―18文学」(新潮社主催)は、大賞に朝香式さん「マンガ肉と僕」、読者賞には森美樹「朝凪」が決まり、贈呈式が行われた。この賞は2001年、新潮社の女性編集者らが企画して創設。エロティックな小説の書き手に女性が少なかったので、女性が書いた性をテーマにした小説に限定して募集。当初約320人だった応募者が約829人に増えた。
受賞者か窪美澄さんは受賞作を含む連作短編集「ふがいない僕は空をみた」で山本周五郎賞、2作目の「晴天の迷いクジラ」が山田風太郎賞に選ばれた。吉川トリコさん「グッモーエピアン」、蛭田亜紗子さん「自縄自縛の私」が映画化されて話題になった。宮本あや子さんは「花宵道中」が単行本と文庫を合わせて11万部超えのヒットになった。新潮社の担当者は「性は人の生き方を描く上でのとっかり。あえてそれを掲げたことで、書くということに自覚的で、覚悟をもって応募してくる書き手が多い」とし作家として自分と向き合うものを持っている」と語る。(東京新聞5月27日、夕刊)
これに限らず、ライトノベルなどで、とにかく通俗的なジャンルで読者を獲得し、出版編集者との信頼を築き、そこで苦節10年.本格的な作家活動に入るケースが多い。「文芸同志会もひろば」で「ラノベ・ブロードウエイ」と称したのは、どのジャンルからでも作家業に参入できる広いルートになっているという意味である。昔は、文壇という世界が機能したが、現在はそれはない。
そのかわり自分の創作世界の読者を招き、呼び掛けてファンをつくることが可能になった。このサイトで「言壷」グループの赤井都さんの情報を出すのは、彼女は読者の依頼で、誕生日のための超短編を書いたり、ファンという個人の依頼にこたえて作品を書いて販売していた。そのファン層に出版社が目を付けた。出版社でも何が売れるかわからないので、そうしたファンづくりの動向を目安にした可能性もある。同時に赤井さんには有力文学賞の最終予選にのこるほどの純文学的な水準の高い作風の実力があるということだ。現在は豆本の世界で活躍しているが、好きなことを好きなだけやって、充実した生活をしているものと思う。主体的に活動をしている。
また、ライトノベルの作家も、ある時期がくると売れなってくる。そうすると、作者は、読者が現在よりもっと高い水準のものを求めていると感じて、内容の水準を深め高めてゆく。それが可能な才能のある人が、作家としての地位を確保できる。編集者だけでなく、読者が作家を育てる時代になっているのではないか。
| 固定リンク
コメント