「そのときソクラテスは?」 牧草 泉
そのときソクラテスは? 牧草 泉
前立腺炎 高血圧症/老眼 関節炎 歯痛/まだあるぞ/糖尿病 帯状疱疹/運動をして 食事療法をして 薬を飲んで/病院の先生は言う/「老人病だから仕方がないんだよ」/でも苦しい つらい 泣きたい/こんなにしてまで/なぜ生きなければならないのか/いっそ/「生きてくれなかったら・・・・・」/もし/ソクラテスだったら?/てんこ盛りの病にも動じることなく/泰然自若として善を説いた?/うっそー アンビリバブル!/ソクラデスだって/きっと老いの病に/泣きくれていたはずだよな
文芸同人誌「海」第二期第九号より(2013年4月1日 福岡市)
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
人の希むところは、一生健康的で、病気知らずにすごせること。善意に満ちて、悪のない世界にくらす―。なんと美しい理想像であることか。しかし、病気でないと健康のことを知ることがない、悪心がないと善人のことを知ることもできない。こうやって両極があって個体環境の平衡を保っているのでしょう。病気のオンパレートを体験するなかで、「ソクラデスだって/きっと老いの病に/泣きくれていたはずだよな」と言って、慰めが得られるのでしょうか。アイロニーが漂うところが共感をよびます。
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コメント
海二期の作品を御紹介いただき、ありがとうございます。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。
投稿: 有森 | 2013年5月17日 (金) 15時56分