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2013年4月23日 (火)

詩の紹介 「蚊」 西村 啓子

蚊   西村 啓子

どこかですでに成果をあげた奴が/目の前をいったりきたり/ニヤリと笑って消えた/刺されたと気づいてから/反撃の行動に移るのに/時間がかかるのを承知のうえだ/暮れていく空の下で/花を植えていたからと言い訳してはいられない
明るい空のした/巡視船が警戒していても/威風堂々とくる隣国の船の数にはかなわない/翻る赤い旗が海を埋め尽くす/と思えば一隻ニ隻/歴史的時間をかけて/退いたり寄せたり/いつの日か占領した島に/高笑いを響かせるだろ
わたしは/おいたりといえど/秋の蚊ごときにと/両手をあけて待ち受ける
(流38により 2013年3月 川崎宮前区 宮前詩の会)

紹介者・江素瑛(詩人回廊
 攻撃についてじっくり観察してから行動に移るのは人間の頭脳の働きであるが、蚊には飢えの生物本能があり、血の匂いを掻きと、真っ直ぐに飛びつく。隣の大国はなにか飢えているのか、血が豊かの小さな隣人に時々刺しにくる。血に充満され、赤い旗はますます赤く見え、威嚇的な存在として映るのでしょう。不快さを耐えることも人生にはつきもの。相手も生き物ですから多少の血は提供しても、気にしない心がまえで過ごすのも人生でしょうね。

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