穂高健一講師の描写解説に関連した話
文章教室の講師をしている穂高健一氏が「エッセイ教室」で描写の説明をしている。これはエッセイ論なので、もっぱら現実生活のなかの描写についてである。
日本の場合、これが身近な生活から小説化する散文が多いので、散文小説にもあてはまる。純粋の想像力を駆使した創作でも、実体験で知ってることは簡単に書いて、想像したことは本当らしくするため、微に入り細に入り書く傾向にある。
そこで、この現象を応用し、これはどこが事実でどこが想像かをクイズにしたのが、『北一郎「ある母親と息子たちに関する逸話」』である。
ただ描写論も万能ではなく、通俗小説を書く場合によく当てはまる。純文学では、心理や観念のなかの現実性を追求する場合などは、描写はそれほど重要ではない。
たとえば、芥川賞の「abさんご」などは、経験と記憶のなかで観念となったところのみでのリアリティが表現されている。読んでいるうちに自分の考えで、概念として記憶しているものが、間違っているのかも知れない、という発想のにとらわれ、自分自身の考え方を不安に感じた部分がある。簡単に片づけていたことが、必ずしもそうではないのか、と感じるのは不愉快な思いである。そういう面があるのが純文学でもある。
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