【エンタメ小説】3月評(読売新聞3月25日)
江戸川乱歩賞を巡っては昨年の江戸川乱歩賞を巡っては議論もあった。SFで実績のあるベテラン、高野史緒(ふみお)さんが、ステップアップを狙っての応募で、ミステリーの登竜門的新人賞をさらってしまったからだ。
≪対象作品≫高野史緒『カラマーゾフの妹』に続く新刊『ヴェネツィアの恋人』(河出書房新社)/小説すばる新人賞は、応募1400を超す最難関級の新人賞。最新の受賞作の一つ、行成(ゆきなり)薫『名も無き世界のエンドロール』(集英社)も読ませる/窪美澄『アニバーサリー』(新潮社、22日発売)は、母性の混迷を考えさせる/真保裕一『ローカル線で行こう!』(講談社)は、廃線の危機にある赤字鉄道の再建ストーリー。新社長に選ばれたのは、経営は素人ながら、新幹線の車内販売員として抜群の売り上げを残した31歳の女性だった。地場産業が廃れ、人口が減り、街が寂れる地方都市の負のスパイラルは、今の日本の縮図である。では、どうすれば元気を取り戻せるか。答えは、恋もミステリーも満載の、この小説の中にある。(文化部 佐藤憲一)
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