文藝同人誌「なんじゃもんじゃ」第15号(千葉県)
低コストで制作できている同人誌だと聞いているが、潤沢な資金で泥くさい同人誌があるなかで、いつも垢ぬけした粋な感じを与える。
【別荘団地自治会長・実記「意地」杵淵賢二】
先号の15号では、番外編で新興宗教の信者が住民として紛れ込んで、大騒ぎになった顛末で大変面白かった。その後、指名手配中の信者が、自首したラり逮捕されたり、東京城南地区を騒がした。とくに川崎から多摩川を渡って大田区に来て捕まった男などは、かなり堂々と行動していて、見た見たという情報を警察に入れていた人が多かった。懸賞金がかると違うものだ。捕まったのは、それからしばらくしてからである。それをそのまま、小説にしたら、おそらくそんな行動をする犯人なんかいるものか、とリアリティがないとされるであろう。
今回は会長の立場で総会を開催するが、対立勢力の動きに腹を立て、総会を済ましたあと辞任するというところで最終回。ちょっと説明不足のところがあるが、ドキュメンタリータッチの表現力に才気が感じられる。
【連作・S町コーヒー店(14)「桜の季節は…」坂本順子】
コーヒーショップのお客の会話を横できくという定番スタイルで、人情話風のコントに仕上げる、。ほとんどプロの手腕である。文芸の芸が光る。桜の季節の詩情を俗世間の噂話を綺麗に並べ、身近なところを素材に見事な散文詩にしている。
【「私のヘルパー日記「君子さん」飯塚温子」】
こういうのも、ひとそれぞれの晩年があり、人生があるのを実感させられる。
【エッセイ「お客さーん」島 麻吏】
介護に疲れれて、食事をしたあと支払いをしないで店を出た時の恥ずかしい思い出を語る。お疲れさんです、という気持ちにさせる。
【「長明曼荼羅」小川禾人】
鴨長明の心境を描く。俗に生き、世捨て人に生きる二面性を表現。小川式長明解釈。
発行所=〒286-0201富里市日吉台5-34-2、小川方。
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コメント
小川さんは同人雑誌水準を抜きん出た作家。
既成作家の実力です。冒険心もあるし、突っ込みの角度も若い作家並み新鮮ですね。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年3月24日 (日) 07時22分