文芸同人誌の同人の姿勢(下)
「グループ桂」は、伊藤教室の生徒だった者だけの同人誌で、伊藤桂一氏はもう教え子をつくらない、というので、会員は高齢化で亡くなったり、執筆をやめたりして、先細りである。
最近は、文学の傾向がちがってきたので、グループ桂の方でも、微妙なところで自己の「癒し」系の作品が多くなった。また高齢化が進んで、提出作品が少なくなった。そのなかで長島公栄さんだけは意欲的で、300枚分を1挙掲載し、師の指摘の部分を推敲したりして、単行本として出版したほどだ。ただ、長島さんの作品だけでは、同人誌雑誌らしくないので、なにか埋め草に書いて欲しいというような話になった。
そこで、同人仲間であったが亡くなった友人の話を物語風の散文にするなら意義があるであろうと、追悼的な短編にした。ここで主人公のように表現している川合清二という人は、江戸川乱歩が晩年になって認めた作風のミステリー作家で、当時の「宝石」という雑誌に2編ほど作品が掲載されたことのある同人仲間であった。知られざる側面を記そうと彼の資料を出していたら、かなりの書きためがあるのが見つかった。今後毎号埋め草は必要であろうと思うので、連載可能な読み切り短編方式にした。形式としては散文であるが、日本の風土には短編小説にも読めるようになった。そこで、短編のように読んでいくときりがないようなスタイルで、そのなかに現代の時代性を盛り込めば、いいかなと考えた。
そういう意味で、同人仲間のために書くという社会参加型の投稿作品となった。
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