暮尾淳「秋晴れの下で」を読む
秋晴れの下で 暮尾淳
思想は/相手に勝とうとするから/つまらないが/負けという感情は/いつまでもみずみずしい/柄にもなく/そんなことを思いながら/街中を歩いていると/乾いたバナナの皮でなく/丸まった朴の枯葉を/右足が踏み/そのバシャリという音が/耳に響き/ガードの上を/電車は行くのではなく/過ぎるだけなのだと/おれは気づいた。
詩誌・「騒」第92号より(2012年12月)「騒の会」東京・中野区
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暮尾淳という詩人は、わたしが見るときはだいたい酔っている。詩人はたいてい酒を飲む。悪酔いしたようなこの世界とつき合うには「しらふ」ではいけないのかも知れない。ここでは朴の落ち葉が、秋の乾いた空気に折れたような音をして潰れる。鋭敏な聴覚は、ガード上を通りぬける電車の乗客との無縁のすれちがいの騒音の,耳刺すわびしさよ。酒は耳の神経を鈍らしてくれる。そこで、詩人はきっとまた、ついつい酒を呑んでしまうのであろう。
紹介者・「詩人回廊」北一郎
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コメント
詩人に酒飲みが多い。なるほど。
酒を飲んでくだをまいてる時間が長いので、長ものを書く時間がないのが詩人。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年1月 9日 (水) 06時21分