著者メッセージ: 島本理生さん 『七緒のために』
中学校の教室の風景を思い出すたびに、今も胸がざわつきます。埃っぽくて、授業は眠たくて、女の子同士の付き合いは面倒で。戻りたい わけでないけれど、ふとあの頃の自分に伝えたくなります。
どんなにつらくても大人になること。そうしたら良くも悪くも、大半のこ とを忘れてしまうことを。『七緒のために』を書く前に、当時女友達からもらった手紙を読み返しました。その大部分が、自分のことを相手に分かってもらいたい、という切実な思いで溢れていて、まるで恋人に宛てたようでした。
そんな女の子同士の痛みや危うさを形にしたい、と思いました。となりにいる女友達だけが唯一の理解者で、同時に、誰よりも自分を傷つける存在だった頃のことを。寄り添うほどにお互いを救えなかった記憶を、今、ようやく少し救えた気がします。(島本理生)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2012年11月1日号より)
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