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2012年11月30日 (金)

文芸同人誌「海」第二期8号(福岡市)

【「フェリーツェの愛」牧草泉】
主人公は女性で、「私」は恋愛関係にあった男性から突然別れを言われ、別れたのだがその理由がわからない。すると彼女の友人がそれは、カフカにはフリーチェという婚約者がいて2度も婚約したのに結婚はしなかったという。そのように彼女の恋人がカフカ的だからそうなったという話になる。カフカの人生解説をするための小説のようだ。
【「鼠の告発」有森信二】
 これはまさにカフカや安倍公房の手法を彷彿させる良くできた小説。大学の准教授が学校に人権侵害されたと思いこむ。それで法務局に告訴したため、その筋からの調査を受ける。大学側ではそれに対応をするために事務局と教授連がいろいろ苦労をする。大学の組織を良く知る書き手の筆力で、いかにもありそうに書く。大学のあたふたする様子を、それが批判的でもなく、同情的でもなく冷静に描くので「そりゃ、大変だろう」と思い、なんとなくおかしい。
 もともと告訴した准教授がすこし自意識過剰で変らしいのだが、言うことがもっともらしいので、それに困らせられる様子が具体的で巧い。物語が終わらないで終わる円形回帰的結末でよく完成にこぎつている。なかなか、前衛味があってすすんでいる。こういう味を意識的に出せるには、相当作家的な腕力を身につけているようだ。同じ作者が「文芸漫遊記」(一)を掲載していて、それも面白く、いろいろな作家の講座を受けた経過が記されていて、書く意欲がにじみ出ている。こように書く題材によってスタイルが決められるというのは、学んだというより、努力か才能か、本人独自のもののようだ。器用なのかも知れない。未知数の可能性を感じさせて興味深い。こういうのを読むと自分は怠け者と思う。
【詩「盈」月岡祥郎】
 生活ではまず人に表現しない意識の流れ「何をしていても昔から」「漠然と遠くをみていたようだった」としながら、自意識のもう一つの精神軌跡を語る散文的詩で読ませられる。
【詩「慟哭」「夢路」「旅愁」笹原由里】
 リズムがあって、ぬくもりも熱情も、ほのかな味で詩らしい詩作品。短詩だが、抒情があって、長けりゃいいということではない。感性が詩人。
(紹介者「詩人回廊」伊藤昭一)

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2012年11月29日 (木)

シンポジウム「ジャーナリズムの未来を語る」を12/20日開催=自由報道協会

 自由報道協会は公益法人移行を記念してシンポジウム「ジャーナリズムの未来を語る」を開催することになった。パネラー上杉隆、パネリスト・田原総一朗氏ほか。≪参照:自由報道協会
 作家で国会議員の田中康夫氏(新党日本代表)は、長野県知事の時に、市民が情報を発信することは「自己表現」であるとし、記者室を県民に開放し、情報が発信できるようしていたそうです。大手ジャーナリストの報道しない、出来ないことを情報発信してみませんか。どんな形でもニュースを流す人はフリージャーナリストであるという見方もできます。

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2012年11月28日 (水)

同人誌「石榴」第13号(広島市)紹介へのコメントの回答

庄野さんは、お父さんの「看護手記」を出版されたそうですね。
 木戸さんの2作「全身昭和」「めくるめく一日」は、私小説風とエッセイ風だったと記憶しています。良い作品で、追及のしどころも心得があって、いい作品だと思ったものです。以前は下記が発行所でした。
発行所=〒739-1742広島市安佐北区亀埼2-16-7、木戸方「石榴編集室」。
 ただ、私は木戸さんは手記以上の表現芸術をめざしていると思い、そのままでは行き詰るのではないかな、と思ったので、不満を述べました。だいたい、私小説もエッセイも散文ですよね。そこには散文精神による芸術性をもつことで、手記としての「自己表現」から叙事詩なり叙情詩なりの作品となると私は考えています。
 文章の世界は、リアリズムだけがすべてではありませんので、手記風ですと息苦しいですよね。どこかに解放感を与えるためには世界を広くとらえて、リアリズムを超えてもいいのではないでしょうか。見知らぬ他人が読んでもいいように。川端康成の「伊豆の踊子」も、踊子の現実は悲惨だったようです。それを詩情にしたわけで、そういう意味での注文づけでした。同人誌には「手記」風が多いのはたしかですが、自己表現の範囲ですから、それでもべつにいいのではないでしょうか。

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2012年11月26日 (月)

詩の紹介 「そしてあなたは窓を開ける」ルース・ポソ・ガルサ(訳・桑原真夫)

「そしてあなたは窓を開ける」 ルース・ポソ・ガルさ(訳者・桑原真夫)

そしてあなたはサ―ル川*畔の窓を開ける/そして暗く寄る辺ない世界をそこに見る
忘却のページを捲りながら/あなたが愛しそしてこの上なく悲しい場所を手繰ってゆく/サン・ロレンソ サンテイアゴ 栄光の門・・・/暗闇に伝わってゆく言葉で
そして無慈悲な人々に対するあの恐怖・・・
その形のないもので表されるメッセージと/孤独の中で織る布は/存在のないもの/ベールで覆われた光が濃くなってゆく/水銀のない鏡のよう
そしてあなたはサ―ル川畔の窓を開ける/そこは 孤独の世界

*パドロンの西を流れウーヤ川に合流してアウロサ入江に注ぐ。ロサリア・デ・カストロの最高傑作の一つに詩集『サール川の畔にて』がある。
(ルース・ポソ・ガルサ詩集「ロサリアの秘密の生涯」より、編訳者・桑原真夫)「東京都土曜美術社出版販売」

紹介者・江素瑛(詩人回廊
2012年7月に満90歳になったスペインの画家、音楽家でもあり現役女流詩人のルース・ポソ・ガルサは、亡き再婚相手を思い恋いし続け、一番影響を受けた十九世紀女流詩人ロサリアに語り掛けた作品であるという。その詩人の愛したサール川は頻繁的作品のなかに取り入れている。
「そしてあなたはサ―ル川畔の窓を開ける/そこは 孤独の世界」
その孤独な世界に人と国の喜、怒、悲、歓が流れている。

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2012年11月25日 (日)

文学フリマでの売れ方その2「野上弥生子の文学とその周辺」

 もうひとつの文学フリマらしい売れ方をしたのがありました。それは、評論集「野上弥生子の文学とその周辺」(草場書房)です。たまたま「詩人回廊」(伊藤誠二の庭)に投稿があったので、思い出しました。この本も第15回文学フリマで売れました。ただ並べておいただけでブースの宣伝にも、なにも書いていなかったのですが、ブースでこの本の「野上弥生子」という表紙をめざとく見つけて手に取った人が4~5人いまして、そのうち2、3人が買いました。価格は定価の半額の500円にしたと思います。いままでも文学フリマで販売してきましたが、そう見られる本ではなかった。ブースの位置がこの本が良く見えるらしく、手に取る人が多かった。
 それと、野上弥生子の研究をする人がかなりいるということらしい。この本には最近亡くなった文芸評論家・浜賀知彦氏とわたし伊藤昭一も執筆しています。編著者から、原稿料として1万円出すから書いて欲しいというので、「いいよ」と1週間ぐらいで書いた。わたしは当時、ライターズバンクの登録原稿料が原稿用紙1枚4000円だったから、大サービスであるし、こんなのはささっと片付けないと効率が悪い。
 書いた内容は、野上弥生子の「海神丸」という小説が事実を題材にしていることを話のタネに、事実の物語化と創作の物語のどこが違うかを論じたものです。
ここではリアリティというのは、本当らしさであって、小説はそれをもって説得力をももつが、事実は起きたことであれば、リアリティのないものでも人々は事実あったことだからと納得してしまう、ということ。
 たとえば最近は、信用金庫たてこもり事件があったけど、これをそのまま起きたことを小説にしたら、おそらく読者は「リアリティ」がない、と批判するでしょう。しかし、そのニュースをテレビでみたり、新聞記事で報道しても、リアリティがない、と批判する人はいないでしょう。
この人間の感受性のずれを、権力が利用して国民をだますのだ、という論旨です。
この評論ではイラク戦争の報道についての批判をしています。現在ならば原発問題にしていたでしょう。日本の原発が絶対に安全で事故を起こさないと小説にしたら、おそらく読者は、スリーマイルやチェルノブイリで起きているのにそれは「リアリティがない」と批判したでしょう。しかし、メディアがニュースとしてそれを報じると、たぶんそうだろうと思って批判しなかったのです。「真実」と「事実」「物語」のずれにスポットを当てると評論家として書くネタには困りません。
 こうした発想のヒントをくれたのが菊池寛の芸術における「真・善・美」の主張でした。菊池寛はよく「本当のことがわかのが文学だ」と言っています。真実ですね、では真実でどれが真実?事実とどうちがうの?という疑問になるのです。

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2012年11月24日 (土)

文学フリマでの売れ方。山川豊太郎「成人男子のための『赤毛のアン』入門」

 山川豊太郎「成人男子のための『赤毛のアン』入門」(文芸同志会発行)=送料共200円)=在庫が確認できたので当会での販売を再開します。≪参照:文芸同志会のひろば
 文学フリマでは、600以上のブースがあるので、フリマの来場者に慣れたひとは、まず見本誌が一堂に展示されている「見本誌コーナー」に行きます。そこで実物を立ち読みできます。見本誌には販売しているブース番号があるので、それでどこで売っているかを知り、買いにきます。ブースにくるといきなり「赤毛のアン」下さい、という感じでした。当然、見本誌コーナーに行かない人もいるわけで、宣伝不足は免れず、ロングセラー候補です。
 これは伊藤昭一の「なぜ『文学』は人生に役立つのか~菊池寛の作家凡庸主義と文芸カラオケ化の時代」(文芸同志会発行・送料とも500円)も同じで、すでに見本誌コーナーで見本を見てこれだけを買いにくるという風でした。この評論のミソは、今は絶版になった「日本文学案内」(菊池寛)の内容が引用されていて、ここでだけ読めるということ。≪参照:詩人回廊
 いまこれのマークⅡを書く予定です。これは菊池寛が説くものに、文芸には「危険性」と「毒性」があるといわれているが、それを恐れてはいけない、というものがある。そこで「なぜ菊池寛は文芸の毒を恐れるな、と語ったのか」という問題を調べている。たしか伊藤整がこの時代の問題について詳しかったと思い、目下全集を読んで調べているが、どうも菊池寛の時代の問題とは別のものがあるようだ。
 そのほか、菊池寛には「文章読本」という文章論があるがこれも絶版。先日、ネットオークションで売っていたので買った。ここには良い文章と悪い文章の見本がある。現在では文章の評価論がないので、これをテキストに現代文章論を展開することができる。冊子化で分割して出しながらそれをまとめて本にする構想である。それまで生きていればの話だが…。

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2012年11月21日 (水)

同人誌即売会「第15回文学フリマ」などのトラックバック

 文学フリマ事務局通信サイトには参加者のブログのレポートがトラックバックされている。拾い読みしてみると、やはり文学フリマがあるから同人誌を作るというような傾向が読み取れる。来年は大阪で開催するというが、文学フリマのために同人誌を新しく作ろうという動きがあるのか動向が注目される。
 また、来年は千葉の幕張メッセを会場に、開催もあるというが、これによって文学フリマに新しく関心を寄せる人が増えれば、さらに同人誌サークルはふえるかも知れない。
 ものを書くということは時間がかかる。読むのもやはらりそれなりに時間がかかる。音楽と読書は時間を消費する。音楽はなにかをしながら聴けるが、生演奏は会場にいかなければならない。
 現代は、テレビ、ラジオのほかに、レジャーが多彩にあり、それらが消費者の時間を奪い合って競争する状況になった。お笑いのコント短編傾向にみられるように、すぐ楽しめてすぐ終わるレジャーの細切れ化傾向のなか、文芸ビジネスは、ほかのビジネス産業に負ける傾向にある。
 文芸同志会としては、まず作品を「詩人回廊」に連載露出して、それらを素材にして本にするというシステムが出来たとみている。「菊池寛“作家凡庸主義”と文芸のカラオケ化の精神」という連載を改稿したが、素材は同じで「なぜ『文学』は人生に役立つのか~菊池寛の作家凡庸主義と文芸カラオケ化の時代」にした。そこで、「詩人回廊」この部分はネット削除した。一部は読めるが全体は買わないとわからないという方式である。
 今回、売り切れとなった山川豊太郎「成人男子のための『赤毛のアン』入門」も一部は同人誌「砂」に、一部はネットニュースサイト「暮らしのノートPJ・ITO」で公開している。
 日ごろから個人としてオピニオンや作風を発信して置くことで、執筆者への親近感が醸成されるのではないかと思う。

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2012年11月19日 (月)

第十五回文学フリマの参加日記

11月18日(日)に東京流通センターで開催の第十五回文学フリマに文芸同志会も参加しました。≪参照:文芸同志会のひろば
 今後も「詩人回廊」サイトにに掲載したものを下書きにして本にすることは続けてみたいと思います。
 店番中に、雑誌「文芸思潮」で「全国同人雑誌評」を担当しておられる東谷貞夫氏が訪れてくれました。わたしの方の「作品紹介」よりも緻密で普遍性をもった評のようで、雑誌「文芸思潮」を読ませもらい感銘を受けました。わたしの読み方は自分の作風を前提にしているので、偏った意見があるので……。

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2012年11月17日 (土)

「文学街」別冊号「絵島夢幻」の注文についての回答

 読者より「絵島夢幻」を何冊か購入致したいと思いますが、どのようにしたらよいでしょうか? お教え下さい。」というご質問に回答します。
ホームページ  <文学街サイト>の上部にメール欄がありますので、そこか発行所に問い合わせたらいかがでしょう。
問い合わせ記事(2008/02/14の記事)「同人誌「文学街」別冊号「絵島夢幻」が書店より注文」
同人誌「文学街」別冊号―241号、遠野未地子「絵島夢幻」(価格800円)が発行元の文学街社に書店からの注文が幾つか、きているそうである。絵島生島事件の物語なので、歴史資料的に興味がある人も少なくないであろう。そこで発行所を記しておこう。〒168-0065杉並区浜田山2-15-41。文学街社。森啓夫・主宰。

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2012年11月14日 (水)

荻 悦子 詩集「影と水音」(思潮社)を読む

 表題の「影と水音は」どこかの庭園の人工の池に水が音を立て湧いている情景から導入されている。そこに金属の球体があり鳩が遊ぶ。現代のメカニックな具象イメージの世界と行く先を問う言葉が、微細な心象イメージを形成する。
「鳩は/樹に飛び上がった/枝から枝に移り/芯のない球体に移る/まだらな影の一部分となる/あるいは/空洞に影を吸われる」「小枝は?」「球体の真中/今ここの/欠けた/映らない部分/水の音は絶えない」「どこへ行こうか」
現代メカニックの具象性が呼び起こす想念を整然と浮かびあがらせ、ああそうであったかと気付かせる。
旅先の風景や昔の出来事の想起を軸に、整然とした形式を保って全体がまとまっている。初出一覧を見ると「雨期」「現代詩図鑑」「るなりあ」の4誌で、「詩集にあたり、ほぼすべての作品を改稿した」とある。それだけのことはあって、言葉が洗練され整った印象を受けた。
(紹介者・北一郎「詩人回廊」)

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2012年11月13日 (火)

同人誌時評(10月)「図書新聞」(2012年11月10日)たかとう匡子氏

題「生きることの価値を切実に問いかける作品」
『未来』第728号(未来短歌会)より桜井由香「今、挽歌とは」、『玲瓏』第82号(玲瓏館)より笠原芳光「伝統とはなにか-『文学としてのマタイ伝福音書』16」
『八月の群れ』第55号(八月の群れ編集委員会)より大森康宏「盂蘭盆会」、『群青』第81号(群青の会)より近藤耿子「レクイエム」
『この場所ici』第7号(「この場所ici」の会)より作田教子「交信」『詩と眞實』第760号(詩と眞實社)深町秋乃「モルヒネ」
『槇』第35号(槇の会)牧野恭子「逆縁」
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)

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2012年11月12日 (月)

文芸同人誌評「週刊読書人」(2012年11月02日)白川正芳氏

「鶴」42号より上井敬一「世界の秘境で思ったこと」、「Myaku」(脈)13号より特集・内田聖子「谷川雁のめがね」・対談「森崎和江・内田聖子」他、広田弘子「山頭火と大山澄太先生-その生き方」(「アミーゴ」68号)、「吉村昭研究」19号より根岸いさお「吉村さんと俳句、吉村さんと句会」
桜井信夫「昨日より今日を、今日より明日を 野上弥生子「迷路」をめぐる断想」(「ペガータ」12)、深町準之介「有明海沿岸紀行」(「火山地帯」171号)、中川節子「独り立ちへの道」(「群青」81号)、有森信二「地鳴り」(「全作家」87号)、平田良「一つの絵」(「文芸長良」25号)、谷口ちかえ「凶日 旅情」(「この場所ici」7号)
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)


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2012年11月10日 (土)

フリマの参加条件としての新刊について

コメントにー「フリマの参加条件には、新刊があることとなっています」とのことですが…公式サイトにも参加要項にもそういう記載はありませんでした。ーとありました。
 そうですか。おそらく何回目か知りませんが、その条件をはずしたのでしょう。2回目以降しばらくは、参加者に常連が多く、そのような申し合わせの雰囲気がありました。開催日公開もあまり突然であると、本を作る時間がないという参加者の声もききました。1年に一度なので、だいたい新しいのが出てるようです。

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2012年11月 9日 (金)

詩の紹介 「日本語慕情」  市川つた

 「日本語慕情」   市川つた

日本人だから日本語を使って/日本人のあなたに思いを伝えたいと/それなのに言葉は一人歩きをして/大切な部分がピエロめいてあなたに到達する/大切な大切な部分だから/恐れて遠廻りして私を不在にする/言いそこね繕いのすき間から思いを逆行し/つのる程委縮し色褪せて行く/口籠り口から出したとたん/後姿の言葉になる/ただっ子のように涙を溜めた言葉になる/言葉の向こうの不可視の視線/念いの屈折 超音波の暗号/表裏まるまる捉えられない言葉の現わせない言葉の温かくって 円くって 柔らかくって/弾力があって 爽やかで 冴えていて深―い/ああ 日本語慕情
(市川つた詩選集一五八篇より(2012年9月東京都板橋区・コルサック社)

紹介者・江素瑛(詩人回廊
言葉は使うひとによって、巧く相手に心を動かすかどうかは別として、母国語が一番である。生まれてから植え付いて来たものなら相手と同じ音色の波長ですぐにも互いに響きあう。しかし日本語は隠喩的な表現が多いし、曖昧模糊、はっきりしない部分がある。理解していくにも難しい。
しかも日本語はだんだん変っていく今時、若ものは昔の日本語の美しさに気づかないようです。由紀さおりさんの日本語の歌声に、外国人のほうが日本語の美しさに魅了されたといいます。いまは伝統にない、いろいろな言葉が生まれてきます、若ものはそれを互いに認知しあう、果たして美しい日本語が時代の流れに勝ち抜けるかしら。

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2012年11月 8日 (木)

日本の出版エージェントの動向

 海外の作家志望者は作品を書くとまず出版エージェントがあって、そこに作品を送ると出版元を探してくれるそうだ。そこで見込みがないと判断すると原稿が返送されてくるシステムだったようだ。今はネットのメールがあるのでどうするのであろう。いずれにしても、芸能事務所のように作家と契約を結び著作権の管理や交渉事を代わりにしてくれるのである。
 東京新聞11月7日付け夕刊では、講談社の若手編集者の佐渡島庸平さん(漫画編集)と三枝亮介さん(文芸担当)が、エージェント「コルク」を設立し、山崎ナオコーラさん、阿部和重さん、伊坂幸太郎さんの海外出版、漫画家の安野モヨコさんが所属しているという。
 先駆けエージェントには1999年に早川書房から独立した村上達郎さんの「ボイルドエッグス」があり、三浦しおんさんや万城目学さんがデビューしているという。
 読み物は日本語だけだと市場が小さい。そのために日本の作家は沢山書かねばならに。それが英語圏の作家だと1年に1作長編を書くといったことで悠々生活している例が多い。市場拡大には英語訳は必要であろう。ただ、それらは売れる作品が前提であるが。

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2012年11月 7日 (水)

【Q4】あなたがもっとも好きな村上春樹作品は?

(※カッコ内の数字は、単行本発行年)
★『風の歌を聴け』 (1979年)言語感覚のよさに魅かれた。あのような言葉が日常語であるはずはないのだが、あれらの言葉が日常語として使われる世界を、不自然さを伴わずに構築できるというのが驚きだった。言葉そのものが物語となり得る作品を読んだのは、これが初めてだった。(東京都 M様 20代 男性)
★『風の歌を聴け』英語で最初に書いたのを日本語にしたとか。その翻訳っぽい文体が新鮮だった。(東京都 I様 40代 男性)
★『羊をめぐる冒険』 (1982年) 文学は文字通り受け止めるものと、自分の中で変換するものがあるんだ!と 面白く感じた。 (熊本県 K様 30代 女性)
★『羊をめぐる冒険』村上春樹の原点とも言える作品だと思っています。(岐阜県 M様 50代 女性)
★『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 (1985年)二つの幻想的な世界が次第にうまく収斂していくところもあざやかだし、幻想的でありながら細部の描写も素晴らしいとおもいます。(大阪府 I様 30代 男性)
★『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』何度読み返しても世界の不思議さと魅力に惹きこまれる。二つの世界に挟まれて漂い、この説明は理系なの文系なの? これは現実なの夢なの? と、何度も疑問を抱きつつも「面白い!」と上下巻、一気読みした作品です。(群馬県 K様 30代 女性)
★『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』題がおしゃれ、比喩が独特、非情に乾いているようでしっとりとした情感に潤った深い哀しみと諦観が深い。あはれなりという美意識を感じる。(愛知県 S様 50代 女性)
★『1973年のピンボール』 (1980年)「僕」がスリーフリッパーのピンボール台「スペースシップ」と再会するシーンにおいて、気持ちが昂る余り、震えが止まらないほどだった。(大阪府 S様 20代 男性)
★『ノルウェイの森』 (1987年)こういうことを語りたいんだという強い想いはとくに伝わってきませんが、だからこそ日常を生きる私にとっては共感できる点が多く、心に沁みる本。(埼玉県 K様 20代 女性)
★『ダンス・ダンス・ダンス』 (1988年)人生はつらいことばかりおきるけど、僕たちは踊り続けなければいけない…。力強く繊細なメッセージ性を備えた名作だと思います。(静岡県 B様 30代 男性)
★『ねじまき鳥クロニクル』 (1994年)最初に読んだのがこの本で、手ごたえを感じ、その後かなり読みました。思ったよりも深い精神世界に惹きこまれていきました。(埼玉県 N様 60代 女性)
★『アンダーグラウンド』 (1997年)私の中のオウム事件に対してのいろんな思いを整理してくれて、改めて被害者の方たちの過酷な日常を知り涙した。
(埼玉県 K様 50代 女性)
★『スプートニクの恋人』 (1999年)手にした村上氏本で、唯一最後まで読めた本。たぶん、村上春樹の世界を下手に意識することなく、作品そのものの世界を読める本だと思う。氏の作品を初めて読む方には、こちらをお勧めしたい。(東京都 H様 30代 女性)
★『村上ラヂオ』 (2001年)あまり知られていないかもしれませんが、村上さんはエッセイが抜群におもしろいです。 (愛知県 Y様 10代 女性)
★『海辺のカフカ』 (2002年)分かりにくい作品ばかりの作家と思っていたが、物語としてすっと心に入ってきた作品でした。 (愛知県 O様 40代 男性)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2012年11月1日号より) 

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2012年11月 6日 (火)

【Q1】村上春樹作品を読んだことはありますか?

  ・はい…57%  ・いいえ…41.4%  ・村上春樹を知らない。村上春樹作品かどうかわからない…1.6%
【Q2】初めて村上春樹作品を読んだのはいつですか?
  ・小学生…0.2%  ・中学生…5%  ・高校生もしくは10代後半…20.9%  ・20代…15.7%  ・30代…7%  ・40代…4.6%  ・50代…3%  ・60代…1.8%  ・70代以上…0.4%  ・読んでいない…41.4%
【Q3】村上春樹作品はどれくらい読んでいますか?(複数回答可)
  ・読んだことがない    …42.6%   ・数冊しか読んでいない  …35.1%  ・長編小説を読むことが多い…13.9%  ・ほとんど読んでいる   …6.8%  ・短編小説を読むことが多い…6%  ・随筆を読むことが多い  …2%  ・紀行文を読むことが多い …1.6%  ・ノンフィクションを読むことが多い…1.2%  ・翻訳ものを読むことが多い…1%
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2012年11月1日号より) 


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2012年11月 5日 (月)

著者メッセージ: 島本理生さん 『七緒のために』

  中学校の教室の風景を思い出すたびに、今も胸がざわつきます。埃っぽくて、授業は眠たくて、女の子同士の付き合いは面倒で。戻りたい わけでないけれど、ふとあの頃の自分に伝えたくなります。
  どんなにつらくても大人になること。そうしたら良くも悪くも、大半のこ とを忘れてしまうことを。『七緒のために』を書く前に、当時女友達からもらった手紙を読み返しました。その大部分が、自分のことを相手に分かってもらいたい、という切実な思いで溢れていて、まるで恋人に宛てたようでした。
  そんな女の子同士の痛みや危うさを形にしたい、と思いました。となりにいる女友達だけが唯一の理解者で、同時に、誰よりも自分を傷つける存在だった頃のことを。寄り添うほどにお互いを救えなかった記憶を、今、ようやく少し救えた気がします。(島本理生)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2012年11月1日号より) 

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2012年11月 3日 (土)

第15回文学フリマ途中経過便り!まだ増えている参加者

 11月18日にTRCで開催される第15回文学フリマに向け、文芸同志会も参加の準備をしています。《参照:文芸同志会のひろば》ここにあるように文学フリマ参加者は600サークルを超えまだすこしづつですが増えています。フリマの参加条件には、新刊があることとなっていますので、発行される同人誌も増えているということです。
 よく同人誌が減っているという話題が出ますが、それは長年活動してきた高齢者が亡くなって自然減になる部分だけをとりあげるからでしょう。文芸同志会発足は2000年11月3日、文化の日でした。文芸研究月報を発行しいたのは、翌年1月。「何で、こんなくだらないことをするのか」と友人にいわれましたが、この情報提供方式が注目され雑誌「文学界」で勝又浩氏にとりあげられ、その後、人材銀行を通して原稿依頼がきて、なんとなくフリーライターになってしまった。その間に発表場所である雑誌媒体がどんどんなくなっていきました。
 今回のフリマでは = なぜ「文学」は人生の役立つのか―菊池寛の作家凡庸主義と文芸カラオケ化の現代― 伊藤昭一=の冊子を出します。山川豊太郎の「読書塵」と合わせて読むと、明示していない形でサブカルチャー論など日本の現代哲学の発想が意識できるようにしています。文学が人生の役に立つのは、読者にとってか、書き手にとってのか、そこを題材にしています。「詩人回廊」に書いたものを、もっと読みやすく、今風に資料も追加しました。冊子ができたら、このサイトを出だしだけにして、あとは冊子を読むようにしたいと考えています。

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2012年11月 2日 (金)

西日本文学展望「西日本新聞」2012年10月31日、朝刊・長野秀樹氏

題「一代記」
宮脇永子さん「台風」(「南風」32号、福岡市)
迫田紀男さん「テオクレドン」(「火山地帯」171号、鹿児島県鹿屋市)
「南風」より和田信子さん「洗面台」・紺野夏子さん「相続」
「火山地帯」より井上百合子さん「真紅(あか)いプラムの秘密」・立石富生さん「五月晴れの日に」
(「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ)


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2012年11月 1日 (木)

文芸時評10月(東京新聞10月30日夕)沼野充義氏

佐々木中「夜を吸って夜より昏い」=不穏な力秘めた作品
小野正嗣「獅子渡り鼻」=「大きなもの」を紡ぎだす
≪対象作品≫アブラハム・イェホンシュア講演「イスラエルに生きる作家の(非文学的)現実」。同氏作品「エルサレムの秋」(母袋夏生訳、河出書房新社)/
佐々木中「夜を吸って夜より昏い」(文学界)/小野正嗣「獅子渡り鼻」(群像)/文藝賞・谷川直子「おかくしさま」(文藝)/新潮新人賞・高尾長良「肉骨茶」/吉田知子「拝む人」(群像)。

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