詩の紹介 「説明のつかない幸運」関中子
説明のつかない幸運 関中子
はるかな入江のように地球は雲の往来をみつめる/地球が雲を喰う/その証明は地球に旺盛な食欲があった説明のつかない幸運を経て/人という身を立てた個人の言葉の奥にかくれたかもしれない
今は想像すら思いつかない音とその組み合わせと意味と/だれもおぼえていないが/おぼえていないという感覚を確かめてなお見上げる/ドミノ倒しのように夏が空をゆきかう/すると確かめられたという思いになってそれは地球につたわり/だれかが何かを思いだしたという啓示か/驟雨が真っ黒につきささる
おぼえていないという感覚に連続するものなのか/それでもなお思いだした何かはその端にあるのか
どこから/何をひく/雨は
雨は自由/それはまるきり疑問符につながる/地球ははるかな入江のように雲の往来を上におく/寄せ来るものを受け入れる説明のいらない終末
詩歌文芸集・「ガニメテ」55より 2012/8/1(東京・銅林社)
紹介者・江素瑛(詩人回廊)数えられない宇宙星球のなか、なにより幸運な地球。その理由はただ一つ、人間はその上に存在できていること。まるで人間のために、自然があり、雲から雨、雨から海や川。地球は水をかかえ、動植物を育てる。生きとし生けるものの糧が与えられるという不思議。
「地球ははるかな入江のように雲の往来を上におく/寄せ来るものを受け入れる説明のいらない終末」を作者とともに、読者も観てしまうのです。
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