著者メッセージ: 佐藤亜紀さん 『金の仔牛』
Q:どうしてバブルは必ず潰れてしまうのですか。
A:潰れたものだけをバブルと言うからです。潰れなければただの経済成長です。
不快なくらいに正確で、同時に曰く言い難いくらい如何わしい話だ。バブルと経済成長の間には厳密な線引きなどなく、人が額に汗して幾ら働いたところで必ずしも経済は伸びないどころか、そもそも景気が悪ければ働こ
うにも仕事自体がない。一方、金が盛んに動き回れば、格別の勤労なしでも、勝手に好況はやって来る。そこには何か悪魔的なものがあると、人々は感じたし、今も感じ続けている。これを克服するには、所謂言語論的転回に匹敵 する大どんでんが必要だろう。
ただしバブルそのものは最高に楽しい。一七一九年のバブル小説というのは、作家になった時には既に考えていた題材の一つだ。それがこの経済的などん底で実現したというのもひとつのめぐり合わせだろう。 (佐藤亜紀)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2012年9月15日号より)
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