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2012年9月20日 (木)

【エンターテイメント小説月評】亡友のSF奇跡の合作『屍者の帝国』

【エンターテイメント小説月評】亡友のSF奇跡の合作  伊藤計劃(けいかく)、円城塔両氏はSFの新人賞の最終候補にともに残ったことをきっかけに、同じ叢書(そうしょ)から2007年、一月(ひとつき)違いでデビュー。現代社会の矛盾を近未来エンターテインメントに投影した伊藤氏と、理系的諧謔(かいぎゃく)が純文学からも評価された円城氏は、ほどなくSF新世代の両雄として脚光を浴びた。伊藤氏は09年、34歳で夭逝(ようせい)する。プロローグだけ残された絶筆を、盟友の遺志を継ぎ、芥川賞作家となった円城氏が完結させた。その奇跡的な合作が『屍者(ししゃ)の帝国』(河出書房新社)だ。
 『フランケンシュタイン』が下敷きなのは明らかだが、作品自体がキメラ(ギリシャ神話の怪物)的たくらみを持つ。アシモフ、ベルヌからロシア文学まで多様な古典小説のモチーフの援用..
終わらぬことに意味がある話もある。山口雅也『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』(早川書房)は、結末を書かないリドル・ストーリー集。
 朝井まかて『先生のお庭番』(徳間書店)は、江戸の園芸に詳しい新鋭が、長崎・出島のオランダ商館医シーボルトと、その薬草園を任された植木職人の少年・熊吉の交流を描く。
 熊谷達也『光降る丘』(角川書店)は、2008年の岩手・宮城内陸地震がモデル。土砂災害に見舞われた山中の開拓村で、行方不明となった祖父・耕一を捜す智志(さとし)の視点と、戦後、満州(現中国東北部)から引き揚げた開拓第一世代の耕一の半生が交差する。
(文化部 佐藤憲一)

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コメント

SF小説の自由自在な小説展開は、過去と現在と未来を三次元に並列できるところが魅力でしょう。
小説の人物造形を立体化できる自在さが可能になる。
時間と空間に縛られたリアリズム文学を開放できる魅力がSFにはありますね。単なる童話的造作のファンタジー小説とは違うリアリテイーを定着できますね。

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2012年9月24日 (月) 21時44分

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