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2012年8月 9日 (木)

著者メッセージ高野史緒『カラマーゾフの妹』

   ドストエフスキーが『カラマーゾフの兄弟』の終盤、裁判のシーンで、 検事の口を借りてやや唐突にこう言っています。「作家を追い詰めるのは ディテールだ」と。壮大な全体像を追うあまりに細部をおろそかにすると、
 その細部に宿ったミスが作家の命取りになるという意味です。そう書いた 瞬間のかの文豪がどれほど意気軒昂としていたことでしょうか! そう、 後ろから殴り殺された被害者があお向けに倒れて胸元を血で染めていたのは、 決して単純なミスではなく、むしろ「読者への挑戦状」であったはず。
 『罪と罰』であれほど綿密に犯行を描写した作家が、ただのミスでそんな ことを書くわけがないのです。
  この百三十年前に突きつけられた「読者への挑戦状」を、我々は今こそ 受け取りましょう。もちろん私もドストエフスキーの縮小コピーになる つもりはないので、高野史緒ならではの「あんなこと」も「こんなこと」 もやってます(笑)。お楽しみください。 (高野史緒)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2012年8月1日号より)  

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