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2012年8月14日 (火)

70代の新人,群像新人文学賞優秀作と早稲田文学新人賞に

対照的な作風、70代の新人作家(2012年8月14日 読売新聞)
 「グッバイ、こおろぎ君。」が群像新人文学賞優秀作に選ばれた藤崎和男さんと、「abさんご」で早稲田文学新人賞となった黒田夏子さん。それぞれ74歳と75歳。(文化部 金巻有美)
 藤崎和男さんの受賞作は、団地に一人で暮らす60歳過ぎの予備校講師が、トイレに入り込んだコオロギと共生しつつ、少年時代に思いをはせる半自伝的な物語。飄々(ひょうひょう)とした人柄がにじんだ作品を、奥泉光選考委員は「上手(うま)い下手でいえば下手としかいいようがないが、魅力があった」と評価した。
  北九州市で生まれ、7歳のときに終戦。早大卒業後に入社した出版社では労組に入って解雇され、10年間の法廷闘争を経験した。その後は予備校講師などを経て今はフリーの編集者。50代で離婚し、60歳を過ぎてからは左顔面の帯状疱疹(ほうしん)で苦しんだ。、「今書かないと時間がない」と感じて書き始めたのは60歳を越えてから。70歳を過ぎてから3年間かけ、4回書き直しした作品が、賞を射止めた。
 受賞作に対しては、「自然主義小説の陳腐なルフラン(繰り返し)のオンパレード」など厳しい意見もあったが、「内からわき上がってくるものを書くだけ。今まで人に結構ひどいことも言われてきたし、74まで生きてれば亀の甲羅だって厚くなりますよ」と姿勢はぶれない。
 黒田夏子さんの作品は、フランス現代文学のような先鋭的な試みに満ちている。固有名詞やカタカナを使わない独特の文字遣いと言葉遣いでつづられた断章の連なり。しかも横書きの作品を、一人で選考にあたった評論家の蓮實重彦さんは「作品をみたしている言葉遣いと語りの呼吸にはとめどもなく心を動かされた」と高く評価した。
 5歳のとき初めて「お話」のような文章を書いて以来、70年書き続けてきた。早大卒業後、教師や事務員などの職を経てフリーの校正者として生計をたてながら、20代から30代にかけては同人誌に参加。様々な賞にも応募したが、1作に約10年をかけ、自分の作品世界を極めようと机に向かう日々の中で、文学賞からは足が遠のいていた。 70歳を過ぎて「これまで書いた作品を形にして残しておきたい、こんな作品でも合う読者はいるかもしれない」と感じていたとき、早稲田文学新人賞の募集要項が目に飛び込んできた。自由度の高い要項を見て、「この賞なら」と思い切って応募した。「一行一行手探りで、自分の世界を守りながら書いてきた。一生懸命になれるのは書くことだけだった」。しみじみ語る。
 70代の書き手が新人賞をとることにはどんな意味があるのだろうか。「群像」の阿部和重選考委員は「選考は作品内容のみを対象に評価し、常にそうあるべきだ。年齢は考慮の材料とはならない」とする

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