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2012年8月 7日 (火)

文芸時評(産経新聞)8月号 早稲田大学教授・石原千秋

啓文堂書店に行ったら、今年度の収穫ナンバーワン候補の赤坂真理『東京プリズン』がノンフィクションの棚に差してあった。これでは困るが、書店はその地域の知的レベルの鏡なのだから諦めるしかない。僕は、小説の新刊の棚にそっと面出しの状態に置いた。版元の河出書房新社『文藝』は赤坂真理特集。赤坂真理は対談の内容などもとても知的なのに、特集の作りがどことなく私小説テイストである。それに奥泉光と堀江敏幸の対談「物語ではなく、小説を」(文学界)を読んで、現在も依然として「三派鼎立(ていりつ)」の時代だと思った。
 三派鼎立とは、文芸評論家・平野謙が昭和初期の文壇を、私小説を中心とした既成文壇、新感覚派を軸としたモダニズム文学、そして新興のプロレタリア文学の三派に整理した図式である。現代はそれぞれ私小説、小説、物語に相当するだろうか。プロレタリア文学がそうであったように、物語はその時代を映す鏡である。
文芸時評8月号 早稲田大学教授・石原千秋 綿矢りさは文壇の蒼井優?

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