« 同人誌「相模文芸」第24号(相模原市) | トップページ | 詩の紹介 「部屋のみどり」江口 節 »

2012年7月16日 (月)

同人誌「かいだん」第59号(小金井市)

【「私のジャン・クリストフ(前編)」大澤和代】
 ロマン・ロランの長編小説「ジャン・クリストフ」の概要をというか抄録をつくることになるらしい。そういうことをよく思いついたものだと、まず感銘をうけた。自分にとっても忘れられぬ小説である。工場に働いていて、夏になると日曜日には、独りで湘南の海水浴場に行った。社会人になって、周囲になじめず、世界文学を読み続けていて、その夏に「ジャン・クルストフ」を海水浴場にまでもってゆき、夏の間に読了した。
 ベートーベンの伝記みたいだと思いながら、自分の孤独な心に、この少年の孤独がひしひしと伝わってきた。いま、この抄録を読むと、不思議なことに小説を読んでいた頃の、忘れていた自分の過去を思い出してならない。江ノ島、逗子海岸、鵠沼海岸、油壺と毎週場所を変えていた。「ジャン・クリストフ」の何巻かを携えて。葉山ヨットハーバーでは、馴染みのメンバーのような顔をして、テラスで読書をした。
 どれだけ世界に人が居ようとも、孤独の質は、自分だけのもの、ということを教わったような気がする。とにかく、孤独なクリストフはいろいろな女性と恋をする。登場する女性の深みというか、思想性というか、そういうものに影響されてか、自分は現実の彼女をつくる遊びがばからしくなり、そこから脱け出し、会社をやめてアルバイトに切り替え大学受験をするきっかけになったのではないかーー。これを読んで、そんな自己回顧をさせられた。
 本編は次は中篇にしても、これは序の口で、相当な長さになるのではないか。
 もし、これを機に、ロマン・ロランを読もうとする人がいたら、忠告をしておきたい。彼の小説に出てくるような、深みのある女性には、平凡な人生を送る人は出会うことはないでしょう。身近にいる平凡な女性を大切にすべき。クリストフ「のような才能のある人は別でしょうけれど。
 なお、本誌の編集者の河崎紀美子さんは、84歳で肋骨を折る交通事故に見舞われ再起したという。敬意を感じます。

|

« 同人誌「相模文芸」第24号(相模原市) | トップページ | 詩の紹介 「部屋のみどり」江口 節 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 同人誌「相模文芸」第24号(相模原市) | トップページ | 詩の紹介 「部屋のみどり」江口 節 »