詩の紹介 「部屋のみどり」江口 節
部屋のみどり 江口 節
一人暮らしの部屋を引き払うとき/君は/細長いガラスの花瓶を三つ/そろり
紙袋に入れた/植物が倒れないよう/助手席の足元に置く
「なに、それ」
「竹だよ、竹」
ときどき水を入れ替えるだけなのに/枯れもせず 繁りすぎもせず/六年目に
一つがしおれ/八年目の春/残った二つが 青々と葉を伸ばしている/五年目
に君が逝ってしまったあとも
なに、それ
たけ だよ、た け
詩誌「まひる」第八号2012年6月(あきる野市 アサの会PART2)
紹介者・江素瑛(詩人回廊)
日々を生きるのに「君」への想いが消えることはない。生きている時の「君」との日常の断片を淡々と表現。まぎれのない簡明な言葉で消えない愛情を唄う。「枯れもせず 繁りすぎもせず」「青々と葉を伸ばしている/五年目に君が逝ってしまったあとも」生きているかぎり君への青々とした愛は消えない。
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