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2012年7月14日 (土)

同人誌「相模文芸」第24号(相模原市)

 本誌は地域色が作品に色濃く反映した作品もあり、地域文化の熟成を感じさせる。
【「ユダヤ難民二万人を救った男(四)樋口季一郎・伝」木内是壽】
 太平洋戦争と樋口参謀本部第二部長の立場がわかりやすく整理解説されている。当時の状況で、終戦になってから、ソ連スターリンが日本の弱っている状況を読んで、北海道を占領しようと「日ソ友好条約」を一方的に破棄、戦線布告するという、世界の歴史に稀な卑怯な行動をとった経緯が語れている。敗戦のなかで、必死に北海道侵略を食い止めた日本側の防衛により、ソ連は多大な損害を受け、邪心を果たさなかった。ひと昔前のアフガン侵略戦争をみてもわかる通り、口先ばかりで、もともと戦争に勝ったことがない国である。
 北方領土問題を論じるにあたって、世代によっては、この事実を知らないのではないかと思わせる。自分には、ソ連は政治的な約束を守らない。裏切りを何とも思わない無知厚顔の人々であり、契約や約束をするべき相手ではない、という認識がある。相手にしてはいけない国である。欲に目がくらんで、ロシアと商売をしても、結局は食い物にされる。これからの世代は改めてそれを知ることになるであろうと自分は予測する。メディアで働くひとたちは、国連で日本が敵国条項対象であることを知らないらしい。周囲の国から敵とされている。拉致問題が起きるのも不思議ではない。相手が敵国だとしている国には警戒心をもつべきだ。
 これは戦争に自力で勝ったことのない国は、姑息な手段をとるようになるーーという歴史的なセオリーを認識すればわかる。アジアの中で日本とベトナムは異端的な存在である。
【「同級生の縁」岡田安弘】
 ミステリー小説の部類だが、それが地域に密着して書けるのが素晴らしい。題材も、孤独死が増えて「遺品整理」業をはじめた男が主人公で、いじめ問題をからめて時流を使うのがうまい。事件に巻き込まれる。なかなか才気のある人だ。話の進め方に意外性があり面白い。相模原市は地元のミステリー作家の作品集として出版をしたら地域振興になるのではないか。陣馬山ブームが来るかもしれない。
【「偽りの日々」外狩雅巳】
 プロレタリア文学の手法を使って、相変わらず上手い。学生運動の活動から、いまだに潜伏している活動家の現在を描く。この手法がいまだに効果的なのは、リアリズム詩に近い文章の凝縮力が文学性を失わないからである。この作品では、組織人としての退廃ぶりが、描写力で表現されている。状況を描いて、理屈を述べないことが、登場人物への無言の批判になっている。
 作者がどう考えているかは問題でなく、的確な描写がすべてを物語る。
 最終章で登場人物のもつトラベルウォッチが、地に落ちて壊れる。作者が文学的効果として選んだ上手いところだが、それはすでに、彼らの精神が破壊されたものであることを暗示している。
 本当は、現代的なテーマなら、壊れた時計を拾って、再び時を刻ませるまでの困難な人生を描かねばならないのだが、作者はそこに気づいているのだろうか。
(紹介者・伊藤昭一「詩人回廊」編集人)

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