「農民文学」第297号に農民文学賞受賞作「赤いトマト」掲載
第58回日本農民文学会総会が4月29日に開催され、農民文学賞受賞の「赤いトマト」宇梶紀夫さんへの贈呈式と懇親会が行われた。《参照:「第55回農民文学賞」詳細記事》
季刊「農民文学」の表紙のクレヨン画を担当しているは小島富司氏であるが、長年わたり農民文学賞の選者をしている直木賞作家・詩人の伊藤桂一氏の肖像画を描いて、贈呈したという。伊藤桂一氏は「うまいものだね。ささっと描いてしまうのだね」と気に入っていた。そこで、記念に写真を撮らせてもらった。
ところで、第55回農民文学賞の宇梶紀夫さんの小説「赤いトマト」に話であるが、起承転結の転の部文が3・11の大津波である。第3段階にあたる書きどころで、ぼくという一人称でありながら周囲をよく観察し、それぞれの立場の登場人物を多数を書き分けて、第3人称かドキュメンタリーのような場面展開に成功させている。こうして、終章に移行し切れ味のよい結末にしている。ここに微妙なバランスで物語を展開させる技術が発揮させている。
ただ、こうした手法は、人間の活動を外面から大きくとらえるのに適しており、基本は大衆小説に適している。逆に言えば宇梶紀夫氏には大衆小説作家としての才気を見せたものとして注目に値する。
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