« 西日本文学展望「西日本新聞」12年5月4日(朝刊)長野秀樹氏 | トップページ | 文芸同人誌「海」(第二期)第7号 »

2012年5月13日 (日)

同人誌「群系」第28号(東京)

【「オーバーラン」外狩雅巳】
 野球が好きで打ち込みたいがそれが許されない主人公。労働者の作業拘束時間、成果の監視、生産構造のなかで、自由とロマンの希求が押しつぶされていく。ここでは職場の班長の歯車としてうまく凌がねばならない状況の軋轢を描く。掌握しきれない女工たちとの葛藤も歯車同士のかみ合いである。組織と個人の立場のちがいを野球のオーバーランの表現に集約させているのか。短編なので、描写中心で仕上げられているのが特長。そこに詩的な飛躍をもたせて結末を締めている。瞬発力のあるエネルギーが出ているが、その現代はアニメも自己感覚描写が出てきたので、その辺との兼ね合いを考えさせられる。
【「眼帯少女綺譚」海藤慶次】
 都会のジャングルを漂流する自分探しの男の話か。漂流の途上に河の中洲には女が居て、男に自分が何を欲しがっているかヒントを与えてくれるのだが、それは何か。面白く読ませられ、その過程を楽しむものらしい。文章が上手い。
【「遊郭跡」成瀬勝】
 戦中戦後の州崎パラダイスを思わせる下町の色町で、怪談とミステリーの反戦小説。話の運び組み立てが江戸川乱歩のようで、懐かしくも耽美的な味わいがする。古めかしくて、リアルであっても現在では異界に感じる世界。若者には新鮮かも。
               (紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

|

« 西日本文学展望「西日本新聞」12年5月4日(朝刊)長野秀樹氏 | トップページ | 文芸同人誌「海」(第二期)第7号 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 西日本文学展望「西日本新聞」12年5月4日(朝刊)長野秀樹氏 | トップページ | 文芸同人誌「海」(第二期)第7号 »