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2012年4月14日 (土)

文芸誌「照葉樹」(二期)創刊号

【「時の空間」瀬比亜零】
 時間は一方向に向うので、時系列という発想が出る。この小説はその時間の流れに亀裂ができて、昭一という主人公が20歳、30歳、40歳の存在時間の自分と情報交流ができてしまう。若い時の昭一が、恋人と別れるが、年代を経た自分と交流して、それを参考に考え方を変えて、幸せな人生を送るというもの。設定を工夫すると、平凡な話も面白く読めるということがわかる。ただ時系列の乱というか亀裂の使い方がどこか変なきがするが、まあ深く追求すべきものでもないかも。

【「甘いリングの向こう側」水木怜】
 衣料品の通信販売の会社に勤める姫子は、電話応対している。常連のクレーマのおばさんの電話にてこずる話から、おばさんのキャラクターを浮き彫りにしていく。基本的に人情話なのだが、従来のこの作者の印象からすると、かなり多作をしてきたようで、文脈に無駄がなくなった。書き込んだ結果無駄がなくなり読み易くなったように見える。市井の生活を描くのに、家族と精神的な距離ができた孤独な高齢者と家庭内暴力を組み合わせるなど、かなりドラマチックな仕掛けをつくる。下町人情小説物としては、芝居がかったところがある。舞台劇の脚本やTVドラマ向きの手法。ストーリーテラーの資質が見える。
 菊池寛は、小説と演劇のちがいについて、戯曲は劇薬的な激しい部分だけを取り出して舞台で演じるから演劇とされるという趣旨のことを説いている。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)

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