文芸誌「胡壺・KOKO」第11号(福岡県)
【「彗星観測」桑村勝士】
大学の入学試験を終えて、その合否の結果待ちの高校生たち。ハレー彗星を見ようと友達仲間と望遠鏡で待ち構えるが、天候の都合が悪く、なかなかみることが出来ない。彗星は学生たちの青春時代の未来の指標のように、雲間に隠れて透視することができない。彗星を見るのに熱心だった友人は受験を失敗し、主人公は、大学受験に合格し、内でマドンナ的な彼女との交際の機会を手にする。彼の心の星はまたたいたのか。
明確な描写力で、青春期のロマンと不安の同居したどこか傾きのある精神状態を描く。
【「女子会をいたしましょう」ひわきゆりこ】
商店街の籤びきの景品に日帰りバスツアーがあり、それぞれの事情でそれに乗り合わせた3人の孤独感をもつ女性3人。主人公は両親と同居した40代、知り合ったのは、60代と20代の世代の異なる女性。それぞれの世代での女性のかかえる現代的な課題を、ソフトな文体で差し出す。物語の軸になるのは主人公が交際中の男性との関係。話の合間にそれとなく問題提起し、主人公が男性との関係にもちはじめた不毛感を暗示。、彼女が男性との関係を清算するところで終わる。
これはこれでこの作者ならではの人間の生き方の表現法が発揮されている。商業性の追及なき純文学表現の独自追究の姿勢になりつつあるのかなと、なんとなく「グループ桂」の宇田本次郎氏の創作態度を意識させるものがある。
(紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一)
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コメント
KOKOの感想をありがとうございます。今号の作品は、自分の日常感覚にこだわって書きました。私は納富泰子さんの作品が好きで、彼女のどこまでも掘りまくる姿勢を羨ましく思っています。彼女のような鋭い感覚や特殊な表現は持ち合わせていませんが、何もない自分を掘るしかない、と思って書いたものです。読み取ってくださり、うれしいです。
投稿: ひわき | 2012年4月18日 (水) 08時55分