同人誌「R&W」11号(愛知県)
本誌は「朝日カルチャーセンター」の教室仲間で、藤田充伯講師の受講者たちの研修成果を問うもの。昨年10号の発行時点で、地域の公的な補助金が出るようになったとある。東京では考えられないことで、愛知県ならではのことであろう。目を通していたが、紹介する余裕が持てなかった。10号から藤田充伯講師がエッセイを書いている。落ち着いた筆致で、読ませて印象に残るものである。
【「雨音」霧関忍】
吉本隆明の亡くなる前に書かれたものであるが、全共闘時代の活動家の話である。主人公の友人で、活動家でなかった男が、主人公の男の部屋にいたので、鉄パイプで活動家のセクト争いのゲバ襲撃を受けてしまう。主人公は友人が死んだものと思い、その襲撃に自分が絡んでいること隠すように細工する。ところが友人は、意識不明の重態ではあったが、死んでいなかった。そこで、主人公の正体……とミステリー風になるのだが、これは小説だが、この時代はゲバ襲撃で死んだり、身体障害者になったりした者が多く出た。経済成長時代の光の部分と裏の暗部である学生革命活動を題材に、論理とは無関係な情念に動かされ、時代に押しつぶされた世代を描く。あれは何であったのかと、感慨深いものがある。
発行所=〒480―1179愛知県長久手上井堀82-1、渡辺方「R&Wの会」
(紹介者・伊藤昭一「詩人回廊」)
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