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2011年11月10日 (木)

「淡路島文学」第6号(兵庫県)特集号

【「あんたどこの子」宇津木洋】
 30年以上前から残っていたマリつき歌のまくら話があって、その移り変わりをインターネットで調べて追跡する。その後は、いくらか変調して幼少時代に死別した父親の記憶につながり、味のある散文になっていく。
 ここではインターネットで検索することで、誰かの記録が日本人の記憶のように活用されるという仕組みに注目したい。ネットに蓄積された記録を書き手が利用して自分の概念を展開できる。それが独自のテーマの情報提供として興味を誘って面白い。
 ネットの特徴である素材事典性を活用することで、時代の流れを意識させ、自らの父親の趣味や人柄の追慕の表現の援用になっている。これが新しい試みになっているところに注目した。ネットは宇宙に浮かぶ断片的な他者の記憶を収めるもうひとつの頭脳である。それを取り込んでいるところが面白い。
 その他、鄭承博文学を語るー没後10周年特集―も、作家の存在と歴史が興味深く追慕されている。コラムでは「膳夫」ネームで原発事故のいきさつを早い時期に批判的に記している。
 6月発行のもので、遅くなったが、忘れることなく、記憶に残っているので紹介した。
 発行所=〒656-0016兵庫県洲本市下内膳272-2、北原方「淡路島文学同人会」。

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