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2011年10月16日 (日)

詩の紹介 寒い夏に 宇治川セツコ

「寒い夏に」     宇治川セツコ
七月だと言うのに/地球はひどい肺炎にかかり/太陽は結膜炎で/泣いているばかり/空はどこを見ても/死んだ魚の色/風が不安な未来へ吹いていく/私は/こんな寒すぎる夏の初めに/古い上着をはおる/なつかしいいい匂いが/数十年の時間をとおって/すがすがしく漂ってくる/色あせた模様の中に/それでも生きている呼吸が/脈打って明るく/忘れていたポケットの宝ものが/暗闇に まだかすかに光っている/しだいに あったかいものが/冷えた私の血管をひらき/そそがれる一滴の真実に/勇気は/その翼をひろげていく
いとしい尊敬の心よ/あなたを湿ったポケットの底に/閉じ込めた時から/人は欲望の牙を/むきだしにして/樹木を倒し 野原を焼き/動物を襲い そして/人が人を殺したー/こんな悲しい出来事は/あなたの信頼を/疑惑の影に立たせ/あなたの愛を/闇討ちにしたためなのだ/なのに/寂しがりやの人間は/愛している 愛していると/ありったけの飾りをつけて/文明の墓石の中から/首のないあなたを追いかける
青ざめた尊敬の心よ/蘇っておくれ/傷ついた信頼の絆よ/立ち上がっておくれ/手垢にまみれた愛の炎よ/もう一度/透きとおる光に/もえておくれ/そうしたら/人は膨れあがった欲望の贅肉を/しずかにそぐだろう/人は裏切ることを怖れ/卑屈な自尊心に躓くこともなく/どんなに 激しい所へも/勇んで進んでいくだろう/そしたら迷子になった/青いリンゴの子ども達が/みな帰ってきて/大地にころがり/はれやかに笑うだろう/夜明けにはまだ遠い夜に/祭り囃子がおどるだろう
闘いのドラは/殺すためのものじゃない/それは/自由の精神を守る為にあるのだ
*イレーヌ=アイアンクラウドさんに捧げます
新原詩人No37 転載「原詩人」27号より 多摩市馬引沢・「新原詩人」隔月刊

紹介者・江素瑛(詩人回廊
 日本に亡命したアメリカ・インデアン系のイレーヌ=アイアンクラウド(日本名・弥永光代)の訳詩「インデアンの詩」に基づく作品でしょうか。アメリカ政府は先住民インデアン人の子供を連れてアメリカ学校で教育させ、アメリカの国民にした。統治された少数民族の哀歌である。それを反抗し、革命に身を投げた「あなた」への賛歌。命あるものをむだに殺すのではない。「自由の精神を守る為にあるのだ」ともう一度その戦いを「蘇っておくれ」と願うばかり。インデアンの悲劇は今も繰り返されている。

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