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2011年9月19日 (月)

詩の紹介 「渕」 たかつか与詩  

「渕」   たかつか与詩
だれだっ/底に潜んで/窺っている奴は/淀んだ鬱屈を敷いている奴/蓄積された思索を栄養にして/時間を停めている奴/覗けば眸を逸らさずに見つめ返す奴/目が合えば貪欲に吸い込もうとする奴/うずくまっている陰影/すでに龍は昇天したはずだ

古代から岩を咬み底を穿ち/あらくれた自然の営み/何者をも寄せつけない孤独/青黒い空間に群生する意思の交錯/光を拒絶する水の彷徨/近付けば/そっと影をずらして/正体を現さない/波立つ動作のひとつひとつ/眸はずっと凝視したまま/底せれぬ闇の深さ/妥協を許さない澱の層/渦巻いているのは/閉じ込められているからだ

流れはかすかに動いていて/木の葉を巻いて/しずかな山の語らいに背を向け/逆らうように小波だつ表情/激しい感情をひた隠し/ゆったりと憩うように/明日を模索する/渕
 (詩誌「田園」(岩礁改題)148号2011秋 三島市南本町 岩礁の会)


紹介者・江素瑛(詩人回廊
人間の心の奥の闇を淵の存在に託し、おのれの憂うつ、澱み、確執、停滞、反逆など動きを暗示している。明るく頑張ろうという前提には、この淵の存在がある。自然の中に何故か、淵は存在する。人間につきまとう運命のように。
「すでに龍は昇天したはずだ」と嘆いていても、いつか渕から幻龍の再現を夢見、出世の機会を。仕事がない、冷凍される状態から再出発の意気地を窺われている。

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