第57回江戸川乱歩賞受賞『よろずのことに気をつけよ』 川瀬七緒さん
はじめまして、川瀬七緒と申します。いよいよ、江戸川乱歩賞受賞作の「よろずのことに気をつけよ」が単行本になり、興奮のあまり落ち着かない日々を過ごしております。
みなさんは、どこか警告めいた響きのあるタイトルから、どのようなことを連想するでしょうか。私は「よろず……」の文言が入った念仏書を見たとき、構想やテーマやキャラクターが頭の中に溢れてきました。
殺人現場から、古びた呪いの札が見つかるところから物語は始まります。「呪い」と言うとおどろおどろしい印象ですが、殺意を抱くほどの憎悪から、相手の不幸を願う妬みまで含めれば、決して非日常ではない。むしろ、生活の裏側にぴったりと貼り付いているように思えるんですね。そんな人間の感情の揺れも、作品に入れ込みました。
最後に。私は福島県出身です。作中に登場する農村風景は郷里を思い浮かべながら書きましたが、残念ながら無惨に崩れてしまった場所もあります。本当にちっぽけなことかもしれません。ですが、本作が被災地のみなさんの励ましになれば、と心から思っております。(川瀬七緒)
講談社『BOOK倶楽部メール』 2011年8月1日号
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